パサートと言えば今はヴァリアント

 話は前後するが、今回の国際試乗会はパサートがテーマでも、パサート・ヴァリアントと呼ばれるワゴンだけが用意されていた。当初、私は「これとは別に、追ってパサート・セダンの発表が行なわれるのだろうか?」と推測していたが、試乗会場で驚くべき話を耳にした。なんと、ドイツを始めとするヨーロッパの主要国では2022年からヴァリアントのみが販売されているというのだ。ちなみにEU圏内でセダンを販売しているのはトルコのみ。そしてグローバルでは中国のセダン需要が旺盛で、ここには専用開発モデルを投入しているとか。いっぽうで、私がパサートというよりもパサート・ヴァリアントの国際試乗会に招かれた事実から推測すれば、日本市場もヴァリアント一本となる公算が大きいとみるべきだろう。

 話を戻せば、試乗した印象もまたティグアンとよく似ていた。というのも、最新のフォルクスワーゲン各車に見られる「軽く弾むような乗り心地」を部分的に採り入れながらも、基本的には同社の伝統的な「どっしりと落ち着いて重厚感のある乗り心地」に仕上がっていたからだ。ただし、ティグアンとの比較でいえば、パサートは後者の「重厚感ある乗り心地」がより強まっているように感じた。この辺は、ティグアンよりもパサートのほうが1クラス上に位置づけられている影響かもしれない。いずれにせよ、フォルクスワーゲンの新しい方向性として納得のいく乗り味だった。

 いっぽう、「軽く弾むような乗り心地」は軽快なハンドリングを生み出すのにも役立っているようで、ハンドリングは正確でレスポンスも改善されている。もっとも、それは「従来のフォルクスワーゲンに比べれば」という注釈つきで、決して過敏な反応を示すわけではなく、高速道路ではフォルクスワーゲンらしい落ち着きも感じられることも付け加えておきたい。

プラグインハイブリッドも可能性アリ

 エンジンは1.5リッター・マイルドハイブリッド・ガソリン、2.0リッター・ディーゼルともに十分に静かでスムーズ。低速回転域ではむろんディーゼルのほうが力強いが、静粛性や滑らかさではガソリンに軍配が上がる。また、ガソリン・エンジンと組み合わされるマイルドハイブリッド・システムは必要に応じてエンジンをサポートしてくれるものの、普段は控えめで不自然さを感じなかった。

 ところで、パサートとティグアンには1.5リッター・ガソリンエンジンをベースとするプラグインハイブリッドも用意されているのだが、関係者の話を聞いていると、パサートに限ってはプラグインハイブリッド仕様が日本に導入される可能性も残されているようだ。こちらは一充電で最大120km(WLTP)のEV走行が可能なほか、パワフルなモーターを搭載している関係でガソリン・エンジンの滑らかさとディーゼル・エンジンの力強さを併せ持つ点も魅力のひとつといえる。

プラグインハイブリッドモデルのシステム

 走りの面でもデザイン面でも上質さが高まった新型パサートは、フォルクスワーゲンの主力モデルのひとつとして、同社のイメージを引き上げる役割を担っていくことだろう。