文=甲斐みのり 撮影=平石順一
カップのふちにかけられる猫型クッキー
部屋に漂う朝晩の空気が涼やかさを帯び始める頃。夏の間は一日中、冷んやりとした床にぺったり寝そべっていた猫が毛布に潜り込んできたら、「ああ、もう秋なのだな。そうしてじきに冬がやって来る」と思うのでした。
数年前に空の向こうに旅立ちましたが、猫と暮らしていた時期は、自ら感じるより先に、猫が季節を教えてくれていました。幼い頃から寒いのが苦手だった私は、冬の訪れを快く思えずにいましたが、猫との生活で冬も悪くないと感じるように。秋から冬にかけては、ベッドに入って眠る間、湯たんぽのようにずっと猫が寄り添ってくれていたので。
夏の終わりと秋の始まりが入り混じる朝。目覚めてすぐに「温かいコーヒーを淹れよう」と台所に向かいながら「とうとう秋がやってきた」と、しみじみ。それというのも暑さのせいか、夏の間は朝一番にコーヒーを淹れる習慣が途絶えるから。猫が毛布に潜り込んできたときのように、これからは、夏と秋の狭間の温かいコーヒーを欲する朝が、季節の移ろいを知らせてくれるのでしょう。
秋一番のコーヒーに添えたのは、大阪・帝塚山で50年以上愛される洋菓子店〈ポアール〉のクッキー「モン シャ」。モン シはフランス語で「私の猫ちゃん」という意味。ブチ猫の、カタカナの「ク」の字のような形は、ひょいっと、カップのふちにかけられるようにと考えられたもの。まろやかで上品な甘さに仕上げた生地の秘密は和三盆を使うこと。愛らしいまだら模様は、キャラメルで描かれています。
まずは、つぶらな瞳を眺めながらコーヒーを一口。それからクッキーをパクリ。猫好き仲間のあの人も喜ぶだろうから、手紙と一緒に贈りものにしようなどと考えながら、朝のひとときを過ごしました。
ポアールには他にも、和三盆とキャラメルと合わせた猫の形のクッキーと、ココア生地にマカダミアを練り込んだ犬の形のクッキーを詰めた「モン・トレゾール」というクッキー缶もあります。菓子名のモン トレゾールは、フランス語で「私の宝物」を表す言葉。売上の一部は、大阪市動物愛護管理施策推進基金に寄付されるそうで、犬や猫を愛する人に嬉しいおやつです。
それから期間限定ですが、白猫のクッキー・モンシャと、