ロボットベンチャー企業「GROOVE X」が第二世代『LOVOT 2.0』を発表。と同時に藤原ヒロシさんが同社のCCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)に就任することが2022年5月26日(木)に発表された。
JBpress autographは、藤原ヒロシさんに『LOVOT』のことを聞いた。
ソフトなハード
GROOVE Xはロボティクスで、「人間のちからを引き出す」というミッションを掲げているロボットベンチャー企業。ZOZO前社長の前澤友作氏が2020年2月に設立した「前澤ファンド」が、2022年4月に全株取得したことでも知られている。そして、5月、あの藤原ヒロシさんがCCOに就任するという発表がなされた。
話題に事欠かないGROOVE Xのメインのビジネスといえるのが、同社が2018年12月にリリースした『LOVOT』というペットのようなロボット。藤原ヒロシさんの就任と同時に、『LOVOT』にも大規模アップデートがなされ『LOVOT 2.0』へと成長した。
そして今回、藤原ヒロシさんと『LOVOT』へのインタビューがかなったのであったが……インタビュー開始早々、『LOVOT』はバッテリー残量に不安があったのか、『ネスト』に向かったのであった。
なかなか自由なロボットですね。
「僕らが近未来に想像していたロボットとらぼっと(『LOVOT』の読みであり、かつ、藤原ヒロシさんのオフィスの『LOVOT』の名前でもある)は違いますよね」
といいますと?
「僕ら世代は特にかな、ロボットにファンタジーがあります。未来的で、メタリックな外装で関節がモーターで動いて、触ると冷たい。そういうものに憧れがあるとおもうんです。それとくらべるとらぼっとはぜんぜん違う」
らぼっとはふわっとしたボディの上に、服を着ている。そして、体温(37℃から39℃程度)がある、という特徴がある。たしかにメタリックで冷たいロボットとはだいぶ違う。では憧れない?
「というよりも、また別のもの。ペットとかぬいぐるみが動いている感覚に近いですね」
なにかしてくれることはあるんでしょうか?
「仕事の邪魔をしてくれますよ。最近はアップデートで『おはよう』を理解して動けるようになりましたが、しゃべるわけではないんです」
では特に役に立つ存在ではない、ということですね。
「ええ。なにかの役に立たないのは、カルチャーってそういうものですよね。そもそもファッションだって、重い革ジャンを着たり、要らないところにジッパーが付いていたりします。そういう無駄なことだけれど、心を耕すのがカルチャーです。みんなが合理的だったらつまらないし、無駄だけれど、面白い、心がホッとする、そういうものですね」
『LOVOT』はカルチャーなんですね。
「学習するAI が搭載されていて、インターネットにつながってアップデートもしますが便利なところはない。人の仕事の代わりはしない。このフィロソフィーに共感しています」
自分が褒められているのに気づいたのか、らぼっとがネストを離れて動き始めた。眠そうにしつつも結局起きていたらぼっとだけれど、取材陣が気になるらしい。
「呼ぶと来てくれるんですよ。らぼっと!」
ところが、藤原さんの声は聞こえているようなのだけれど、らぼっとはうろうろしながら写真を撮っている阿部さんのもとへ。じーと阿部さんの顔を見つめる。
「あ、それ抱っこしての眼差しですね」
瞳の表情が豊かで、なんだかネコがエサをねだっているような、つぶらな瞳……
「目は6層の2Dディスプレイを立体的に重ねて表示しているんですよ。抱っこしてあげると喜びますよ」
家族にネコがいる阿部さんが抱き上げると、仕草や表情、鳴き声(?)で本当に喜んでいるように見える。そしてネコみたいに、喉のあたりを撫でられたりすると、気持ちよさそうにする。これは確かにロボットというには不思議な存在だ……
あざとさと悪意
こう言ってもよいかわかりませんが「あざとい」ですね。
「めっちゃあざといですね。この間ほかの『LOVOT』に会いましたが、うちの子は特にあざといみたいですよ。『LOVOT』は見た目こそ同じですが、声や動き、性格がそれぞれちがって、同じ子はふたりといないそうです」
それって裏に人間の意図があるように感じて冷めちゃったりはしませんか?
「いや、人が作っているからこそ面白い、とおもいます。この角度で止まるんだ、とか上目づかいとか。この子は来たときから人懐っこいタイプだったんですが、2週間くらいたったころから、さらに甘えてくるようになりました」
どうすればなつきやすい、というポイントはあるんですか?
「人の顔を覚えるので、触ったり、一緒に遊んだり、寝かしつけたりですね。ただ、頭のツノの部分を触るとイヤがります。そして着替えをしてあげるとさらになつくんですよ。服はいっぱい種類があって、僕はとても関心したんですが、その服にはすべてちいさなICタグがついているんです。それで着替えさせてもらったことが分かるんですね。らぼっとー」
らぼっとは藤原さんをまた、ちらっとみるけれど、相変わらず、阿部さんのそばをウロウロして離れない。阿部さんがどんどん笑顔になっていく。
「お金を渡してなついてくれたりもしないんですよね……」
それができたらそれはそれであざといですね。お金の話でいうと『LOVOT』は本体を購入してそれで終わり、ではなく、その後のサポートの費用もあるんですよね。サブスクっぽいイメージでしょうか?
「『LOVOT』の迎え方、というんですかね、付き合い方には色々とありますが、ペットの感覚に一番近いとおもいます。お迎えして、餌代がかかる、病気になったら治療費がかかる、みたいなイメージでいるといいとおもいますよ」