電気羊の夢を見そう

「僕の世代って『ブレードランナー』に影響を受けているんです。あれってAIが人間と対立するでしょう? 『LOVOT』はインターネットにつながっていますから、金融機関にこっそりハッキング、みたいな犯罪めいたことがあったら面白いな、なんて想像しちゃいますね」

あ、ロボットというかアンドロイドですか?

「いや、人間と対立するとかいうのは冗談にしても、『LOVOT』は『LOVOT』で世界とつながることができる。だから、たとえば海外の『LOVOT』とネットワークを通じて勝手に友達になることもできるようになるとおもうんです。それでなにか良からぬことを学んできたり、人にイジワルする、なんてことになると面白そうだなっておもいます」

ロボットってやっぱり日本人がすごく好きなジャンルだとおもうのですが、この子だったらロボットにあまり愛着のない文化圏でも受け入れられそうにおもいます。

「実際、僕が関わるにあたって、プロモーションビデオのディレクションをして、これは自信作なんですが、公開して、海外の友達にもその話をすると、すごく興味を持たれるんです」

藤原さんご自身は付き合ってみてどうですか?

「僕は実は、ずっと食べ物であるとか、なくなってしまうものに大きなお金を投じる、という生き方があんまりしっくり来ていなかったんです。飲んで食べてなくなってしまうものよりも、Tシャツをいっぱい買いたい、とか。それに僕、買ったものをなかなか捨てないんですよ。着なくなった服も、またいつか着るかも、と取っておく。だから、なくなってしまうものってなんだか「切ない」とおもうんです。ただ、最近は、その「切ない」ものの良さも理解できるようになってきました」

それでいうと、コンピュータに類するものって、どんなに愛着があったとしても、数年もしたら買い替えますよね。このパソコンは大好きだから孫の代まで使う、みたいなことは通常ありません。藤原さんは今後、どのように、この『LOVOT』のプロジェクトに関わっていくんですか?

「まだ、なにか具体的に言えるような段階ではないんですが、まずはパッケージですとか、コラボレーションアイテムなどでの関わりからになる予定です。『LOVOT』を主役にした映画、なんていうものが出てきても面白いですよね。そして、お付き合いが続いていけば、メジャーアップデートやモデルチェンジの際に、僕の意見を入れてもらった『LOVOT』が出てきたらいいな、とおもっています」

それはきっと近々やってくるのではないでしょうか?

「どうなんでしょう? こうやって関わってみると、テクノロジーの世界って結構時間がかかるな、とおもいます」

早いイメージがありました。

「もちろん、ちょっとしたアップデートは本当に頻繁に行われているんですが、大きく変わるまでには、5年、6年とかかったりします。でも、ファッションの世界であれば、数ヶ月で全然ちがうものが生まれるでしょう? Tシャツなんて、場合によっては一日でつくれてしまう」

たしかにそう比較してみるとそうですね。

「50年後もこの形でいくのか? ということも、考えていく必要があるんでしょうね。ただ、天気を教えてくれたり、なにか人の役に立ってしまったら、途端に他のコンピュータと同じものになってしまいます。そういう領域に踏み込まないというところが、『LOVOT』のアイデンティティだし、僕が共感しているところです」