文=のかたあきこ 写真=木下清隆、峩々温泉
胃腸病の名湯を、「かけ湯」「飲泉」「入浴」で楽しむ
宮城県蔵王山中、濁川(にごりがわ)渓谷に峩々(がが)温泉はある。仙台市街から車で1時間ほど。“峩々”とは切り立った険しい崖を意味するそうだ。暖炉がある談話室のソファに腰掛けると “峩々”の大自然と対面する。
胃腸病の名湯で知られ、開湯は明治9(1876)年。現在は六代目の竹内宏之さんと女将の美咲さんを中心に家族で切り盛りする。世代交代を機に施設を改装。温泉の魅力はそのままに、貸し切り風呂の新装、客室リニューアル、wi-fi完備の談話室など快適な滞在空間をつくり、現代の湯治場として進化させた。
男女別の大浴場には、「ぬる湯(42〜43度)」と「あつ湯(47度)」の浴槽がそれぞれにある。あつ湯の入浴スタイルに、伝統の「かけ湯」がある。それは湯船の縁に寝そべり、竹の筒で温泉をくみながら胃や腸のあたりにゆっくりと100杯ほどかけるというものだ。自然発生的に生まれた湯浴みスタイルでだそうで、なるほど、じんわりと体にしみわたり、芯から温まる。
峩々温泉は、群馬県四万(しま)温泉、大分県湯平(ゆのひら)温泉と並ぶ日本三大胃腸病の名湯だ。泉質は、ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉。飲泉ができ、消化を促進するという。自家源泉かけ流しの温泉は、ふわふわと柔らかい肌心地だ。クレンジング効果と保湿作用もあり、
大浴場に併設して露天風呂もあり、こちらは渓谷の爽やかな風と森の緑の色彩が心地よい。名湯に浸かりながら、心静かにリフレッシュできる最高のひと時。穏やかな時間が流れている。夜の星もきれいだ。