文=酒井政人
正月の箱根駅伝は平均テレビ視聴率が25%を超えるほど絶大な人気を誇っている。その理由のひとつに絶妙なロケーションがあるだろう。10区間で全長217.1㎞の道のりは大都会を駆け抜けて、海を眺めて、山に挑むという壮大なものだからだ。旅気分も味わうことができる箱根駅伝をより楽しく観戦できるように、各区間の特徴と見どころを紹介したい。
往路の見どころ
1区21.3㎞(大手町→鶴見)順位よりもトップのタイム差が重要
箱根駅伝は東京・大手町の読売新聞社東京本社前を午前8時00分にスタートする。決戦前の緊張感は独特だ。1区は全体的にはフラットなコースで、起伏は7.8㎞付近の八ツ山橋と18㎞付近の六郷橋くらい。序盤から高速レースになるのか、スローな展開から終盤にペースアップするか。どちらかのパターンになることが多い。2区にエースが控えていることもあり、1区は順位よりもトップとのタイム差が重要になる。
2区23.1㎞(鶴見→戸塚)序盤から〝頂上対決〟が見られる?
歴代のエースたちが名勝負を繰り広げてきた「花の2区」。前半はフラットだが、横浜横須賀道路のガードをくぐる14㎞付近から約20m上る権太坂があり、ラスト3㎞に標高差で約40mものハードな上り坂が待ち構えている。留学生ランナーの参戦も多く、順位変動が激しい区間だ。今大会は区間記録保持者のイェゴン・ヴィンセント(東京国際大)と10000mで27分23秒44の日本人学生記録(日本歴代2位)を打ち立てた田澤廉(駒大)の〝頂上対決〟が濃厚。エースたちの激しいバトルが見られるはずだ。
3区21.4㎞(戸塚→平塚)ペース配分と終盤の走りに注目
往路の中盤となる3区は1㎞付近の原宿第一歩道橋あたりから浜見山交差点までの約9㎞で、約60mの標高差を下る「スピード区間」になる。比較的走りやすいコースだけに1年生の起用も目立つ。11.9㎞の浜須賀歩道橋を右折して国道134号線に入ると、ランナーたちは左に相模湾、正面に富士山を望む。湘南大橋を渡れば、残りは約4㎞だ。前半飛ばしやすいコースだけに、ペース配分と終盤の走りがポイントになる。
4区20.9㎞(平塚→小田原)意外と険しい「準エース区間」
往路では最短区間だが、コースは意外と険しい。そのため「準エース区間」と位置付けている大学が多い。海岸線から大磯駅前歩道橋から再度、国道1号線へ。東海道の松並木を抜けると、12㎞手前の国府津駅入口までは細かい起伏が続く。後半はいくつもの橋を渡り、17年大会から延長された終盤の2.4㎞は標高差で30mも上ることになる。なお直近3年間は4区でトップを奪った大学が、そのまま往路を制している。
5区20.8㎞(小田原→箱根)まさに「箱根駅伝」を象徴する区間
天下の険を超える5区は上り坂が続く箱根駅伝を象徴する区間だ。スタート地点の鈴廣前は標高約40m。箱根湯本駅を過ぎた3㎞付近から本格的な上りが始まり、そこから約13㎞にわたり、上り坂が続く。コーナーが連続するため、前の走者を把握するのが難しい。そして距離が進むにつれて、気温も下がっていく。16.3㎞付近で標高874mの「1号線最高地点」に到達。その後は元箱根まで一気に下り、最後の約1㎞は緩やかな上り坂。芦ノ湖には往路のゴールテープが待っている。