文=酒井政人

2019年10月26日、第96回箱根駅伝予選会 写真=長田洋平/アフロスポーツ

本戦とは違う〝難しさ〟

 2022年正月に開催される第98回箱根駅伝の予選会が10月23日(土)に行われる。前回大会で10位までに入った駒大、創価大、東洋大、青学大、東海大、早大、順大、帝京大、國學院大、東京国際大にはシード権があり、その他の出場校「10」が予選会で決定する。

 駅伝はタスキをつなげて、選手が1人ずつレースを進めるが、箱根駅伝予選会は異なる。各校10人以上12人以下がハーフマラソンに出場。一斉スタートでの勝負となり、各校上位10位までに入った選手の合計タイムで争われる。本戦とは違う〝難しさ〟があるのだ。その戦いは、「予選会には魔物が棲んでいる」とこぼす指揮官がいるほど。昨年は本戦に18年連続出場中だった中央学大が魔物に飲み込まれている。

 トップ通過を狙っていた中央学大はまさかの12位。悪夢から数日後、川崎勇二監督に取材すると、こんなことを話していた。

「正直、まだ実感がないですね。落ちるという感覚も忘れていました。主力数人が外れましたが、落ちることはないだろうと正直思っていたんです。しかし、他大学が思ったよりも速かったので、10㎞手前くらいから焦りましたね。15㎞付近でグループが崩壊して、18㎞地点ではかなり厳しいなと感じていました。10番の大学が発表されたときに、正直、愕然としました……」

 順位発表の後、川崎監督は選手たちに声をかけられなかったという。それだけの衝撃と落胆があった。

 昨年は専大が7年ぶりの通過を決めた一方で、前年26年ぶりの突破を果たした筑波大は18秒届かない。1人あたり2秒差が明暗を分けたことになる。

 

実力差はほとんどない有力校

 近年は有力校の実力差はほとんどなく、今年の予選会も大混戦になるだろう。予想は難しいが、まずは各校の実力を知るうえで、エントリー上位10人の10000m平均タイムを見てみよう。

①明大 28:43.7 ②中大 28:56.3 ③日体大 28:58.1 ④拓大 29:00.9 ⑤中央学大 29:04.4 ⑥国士大 29:06.5 ⑦法大 29:09.3 ⑧神奈川大 29:13.3 ⑨山梨学大 29:19.1 ⑩城西大 29:21.6 ⑪上武大 29:26.5 ⑫大東大 29:28.8 ⑬駿河台大 29:29.3 ⑭慶大 29:38.6 ⑮立大 29:40.3 ⑯専大 29:42.4 ⑰日大 29:45.8 ⑱流経大 29:47.1 ⑲亜大 29:52.3 ⑳東農大 30:00.1 ㉑筑波大 30:02.1

 10000m平均タイムと今季の実績から考えると、明大の戦力が抜けており、トップ通過候補になるだろう。本戦でも上位進出を狙っており、今季5000mと10000mで学生上位のタイムをマークしている鈴木聖人と手嶋杏丞(ともに4年)の走りにも注目したい。

左・2021年1月、第97回箱根駅伝、往路5区の鈴木聖人(明治大)、右・同じく復路7区の手嶋杏丞(明治大) ともに写真=アフロ