三越、伊勢丹という日本を代表する百貨店を統括する三越伊勢丹には、サウナ部というあまり聞き馴染みのないグループがあります。その活動は、部員それぞれがプライベートでサウナに足を運ぶだけでなく、サウナの魅力を伝えるべく、数々のイベントを開催することもあるようです。人はなぜ、サウナを求めるのか。今回はサウナ部を代表して2人のメンバーに、サウナの魅力や楽しみ方について話をうかがいました。

取材・文=永坂佳子 撮影=山下亮二

田代さんが「これぞ理想というサウナ」という長野県のゲストハウスLAMPにある「The Sauna」(https://lamp-guesthouse.com/)。野尻湖の湖畔にある手作りのサウナ小屋で、ロウリュのアロマは蒸留によって生成された自家製のものを使用。

百貨店だからこそ提案したい、サウナの楽しさ

 2021年3月、サウナ好き社員により発足した三越伊勢丹サウナ部。きっかけは、紳士雑貨担当の福島成博さんが同じ部署の同僚に声をかけたことだと言います。当初5人で始めた活動は、サウナ人気を背景に賛同者がどんどん増え、今では全国に130人を超える会員がいるまでに成長しました。

三越伊勢丹サウナ部の立ち上げメンバーの福島成博さん(右)と田代径大さん。プライベートでサ活(サウナ活動)に励むのはもちろん、イベントなどの企画も行う。

 まずは、サウナ部立ち上げの経緯から伺ってみましょう。

福島「2020年の最初の緊急事態宣言の時は百貨店もしばらく休館せざるを得なかったのですが、宣言が解除になって久々に顔を合わせたお客様が『どこにも行くことができなくて、とてもつまらなかったよ』とおっしゃったんです。外出や遠出も不自由になり、そういう思いをお持ちのお客さま向けて、身近で楽しめて毎日が楽しくなる提案ができないかと考えて出てきたアイデアが、以前から個人的に好きだったサウナ。

 百貨店は品物を売るところと思われがちですが、ライフスタイルの提案や文化の発信も百貨店の大きな役割のひとつです。最近ブームになっているサウナも、まだまだその楽しさを知らない人が多いはず。まずは社内のサウナ好きの同僚に声をかけて部を作り、部のメンバーを中心にイベントの企画を行いました」

福島成博さん(日本橋三越本店 紳士雑貨担当)。サウナが好きになったのは、中学時代の陸上部のコーチに疲労回復の為に温冷交代浴が良いと勧められ、チームメイトと銭湯に行くようになったからだとか

『マンガ サ道』作者のタナカカツキ氏などを招いて行ったイベントは、サウナーはもちろん、今までサウナがあまり好きではなかった人にも楽しんでもらえるよう工夫したと言います。実は、今では週に1~2日はサウナに行くという田代さんも、もともとサウナが苦手だったとか。

田代「出身が東京の下町だったので、小さいころからよく銭湯に行ってました。大きな湯船や人との触れ合いは好きだったのですが、サウナは大の苦手でした。扉を開けると、熱気と独特のニオイがモワッと押し寄せてくる。小学生にとってそのニオイはなかなかキツイものがありました(笑)。

 でも、大人になって久しぶりにその銭湯に行ってみたら綺麗にリニューアルされていて、なんとなくサウナに入ってみたんです。サウナ室でしっかり温まってから水風呂に入ってみたら、これがめちゃくちゃ気持ちよくて。それからすっかりハマってしまいました」