高千穂峰に全室桜島ビューの温泉旅館
「星野リゾート 界 霧島」は霧島連山の主峰・高千穂峰の中腹、標高約600mの地に、星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の17番目の施設として2021年1月29日にオープンした。
霧島錦江湾国立公園の大自然に抱かれ、全49室が桜島ビューを誇る。そのうち19室には眺めのいい露天風呂が付き、好きな時に気兼ねなく温泉が楽しめるのが嬉しい。
全室が「界」の特徴である「ご当地部屋」で、これは“地域文化と究極のくつろぎの追求”をテーマにするものだ。
界 霧島ではご当地部屋を「薩摩シラス大地の間」と名付け、例えばベッドボードは火山噴出物のシラスを用いた抗菌性のシラス壁で霧島連山を表現。照明には薩摩和紙を採用し、調度品は薩摩錫器(さつますずき)、壁飾りに大島紬をあしらうなど、客室で地域の伝統工芸に触れられる。
また全館がwi-fi完備で、客室には大きなデスクがあり、コロナ禍で評価が高まるワーケション(リゾートテレワーク)にも最適だ。
スロープカーですすき野原の湯浴み小屋へ
温泉の湯浴み小屋は、客室棟から50mほど下った広大なすすき野原に佇む。ユニークなのは、ガラス張りのスロープカーで絶景を楽しみながら行き来することだ。
露天風呂は絶景の特等席になっている。すすき野原の向こうには、右肩上がりに見える桜島が錦江湾に浮かぶように見える。夕日や満天星、霧模様など、刻一刻と表情を変える景色にも癒される。
内風呂は源泉掛け流しの「あつ湯」浴槽と、「ぬる湯」浴槽を用意する。温冷の交互入浴をすることで、血行を促して体の芯まで温める。
霧島神宮温泉は弱酸性の単純硫黄泉(pH5.6)で少し白濁している。角質の軟化作用があり、透明感のある明るい肌をもたらすと言われる。強酸性で知られる霧島温泉の仕上げ湯として親しまれ、肌触りの優しい美肌湯だ。
湯上がり処に用意された黒酢ドリンクや霧島茶は、全国区の特産品。名水と人の技で育まれた、体に優しい味わいを楽しみたい。
人と大地が育む美味を堪能
夕食は季節を楽しむ会席料理。プライベートが保てる半個室の食事処でゆっくり味わえる。海と山の旬の幸が満載の「宝楽盛り」は八寸とお造りと酢の物を、おかもち風の特製容器に盛り込んだもの。メインの「黒豚しゃぶしゃぶ」は、旨みがあり柔らかく、脂がさっぱりしている黒豚を、アゴ出汁と削りたての鰹節の追い鰹で味わう。
白薩摩焼や龍門司焼といった器や、豊富に揃う芋焼酎が堪能できるのも、宿泊してこその魅力だ。ドリンクメニューはQRコードによる説明付き。これはコロナ禍の取り組みで生まれた新サービスだ。
総支配人の永田淑子さんは、こう話す。
「鹿児島県の焼酎をドリンクメニューのトップ画面でご紹介しています。霧島は名水の里なので、焼酎をはじめ美味の宝庫です。関東からこちらへ着任してまず驚いたのが、霧島市は水道水が100%湧水・地下水で賄われていること。地元の方が普通に話されるから、それってすごいことですよ、と感動したのです」
朝食は黒酢ジュースに始まり、鶏肉と野菜を使った具だくさんの郷土料理「さつま汁」、さつま揚げ、削りたての鰹節で楽しむおぼろ豆腐ほか、鹿児島の味覚を存分に味わえる。
パワースポットをめぐる旅の拠点
毎夜開催の地域紹介サービス「ご当地楽(ごとうちがく)」は、霧島九面太鼓(きりしまくめんだいこ)保存会監修による演舞。天上界から神が地上に降り立ち、第一歩を高千穂峰に記したとされる神話「天孫降臨」を、スタッフが太鼓と神楽鈴を使った演舞で紹介する。
高千穂峰登山口や霧島神宮へは車で10分ほど。壮大な自然と悠久の歴史を、温泉旅館で美味美酒とともに体感したい。周辺には地鶏料理店(古里庵)、黒酢レストラン、焼酎蔵元ほか、味処が目白押しだ。
2021年5月10日〜8月30日は、大阪南港と鹿児島志布志港を結ぶフェリー「さんふらわあ」でいく3泊4日の「霧島パワーチャージプラン」が登場するなど、観光業各分野との連携企画が話題を集める。
開業にあたり、永田さんがこう言っていたのが印象的だった。
「『霧島から九州を盛り上げよう、日本旅を盛り上げよう』と士気を挙げるスタッフが、全国の星野リゾートから集まってきました。合言葉は『チェスト〜!』、鹿児島弁で「よしやるぞぉ〜!」という意味です!」
女性総支配人の細やかな視点と大胆な発想の下、スタッフとお客様が新しい宿をつくりあげていくのだろう。近隣地域の協力も既に素晴らしいと感じた。
鹿児島体験の絶景温泉旅館へ、ぜひおでかけください。