「中古品」と「ラグジュアリー」は共存しうるのか?

文=中野香織

©️getty images

高級ブランド品の会員制オンライン委託販売サイト「ザ・リアルリアル」のCEO、ジュリー・ワインライト氏。同社は2019年6月にアメリカのナスダックに新規上場を果たすなど、アパレル業界内外から熱い注目を寄せられている。日本には2013年に上陸するも、2年後に撤退している

6兆円を超える古着マーケット!

 ここ10年で大きく価値を上げ、意味を変えたもののなかに、中古の服飾品がある。

 10年前はまだ、中古の服飾品を着るということに対して、一部の古着愛好家を除き、ハードルがやや高かった。しかし、この10年で中古市場は拡大の一途をたどっている。「サステナブル・ブランド ジャパン」(2006年創業のアメリカ発総合メディア企業「サステナブル・ライフ・メディア」社と提携する、日本のビジネスパーソン向け情報サイト)によれば、2009年には2兆9000億円だった世界の古着市場は、2024年には6兆7000億円になると予測されている。

 

中古品はかっこいい?

 中古市場拡大の背景には、何があるのだろう。

 まず、真っ先に考えられることは、持続可能な循環型社会を作ることへの意識が高まったこと。衣類の大量生産・大量放棄が地球環境を汚染していることが喧伝され、とりわけ若い世代のなかに、服飾品を捨てずにリセールで売買し、中古品を着ることは持続可能な循環型社会に貢献する「かっこいいこと」という意識が育ってきたことが挙げられる。

 古着を着ることが恥ずかしいことではなく、むしろ当たり前のクールな選択肢のひとつであると考える世代が台頭してきたことを受け、アメリカ最大手の古着販売仲介サイト「スレッドアップ」は、11月8日、リブランディングをおこなったと発表した。

 スレッドアップの設立は2009年。当初は古着に対して先入観をもったり、懐疑的であったりする風潮があったが、現在はむしろ「誇れること」になっている、と社長のアンソニー・マリオ氏は語る。同社は、地球や財布にとって賢い選択をしたときに感じられる誇りを新ブランドの特色として押し出し、キャッチコピーを「Thrift Loudly」(堂々と、古着を着よう)と打ち出した。古着に対する偏見がなくなったどころか、古着には好もしい変化をもたらす力がある、とみなされているのが今なのだ。

一般人から回収した古着を厳選し、ハイクオリティなECサイトで販売する「スレッドアップ」のインスタグラム。2020年にはアメリカの小売最大手「ウォルマート」と提携。同社のオンラインサイトで「スレッドアップ」の古着を販売している