一流ブランドにとっては、中古市場に入り込むことで、ブランドの高級感とステイタスが損なわれ、新品の販売にまで影響を被るリスクがある。それでもなお、参入せざるを得ない事情が出てきたのである。偽造品が紛れ込むことへの警戒である。

 とりわけ、ハンドバッグなど利益率が高いものは、偽造品が紛れ込みやすい。シーズンごとに細部も変わる製品に対し、正規品か、偽造品かを確実に見分けることができる専門知識をもっているのは、実はブランドの人間だけだったりする。したがって、偽造品を徹底排除し、流通している製品に対する信頼感をより高めるためには、ブランド側が中古品市場に関わることが不可欠になっているのである。

 自社独自の中古品販売システムを作り出したブランドもある。たとえば時計においてはリシャール・ミルが「認定中古」という概念を持ち込んだ。中古品の買取り資格を自社でコントロールすることによって、値崩れを防ぎ、ブランド価値を高めることに成功している。

 リーバイスもまた、自社独自の買い取り・再販制度「リーバイス・セカンドハンド」を開始した。経年によって価値が落ちないとなれば、ブランド価値はいっそう確かなものとなる。

 

活況の背景にある、経済の逼迫

 中古の服飾品の価値が上昇し、リセール市場が活況を呈している背景には、良いことばかりがあるのかといえば、必ずしもそうではない。

 誰でも気軽に売買できるため、社員が社販で買った商品をメルカリで売るとか、エスカレートすると商品を盗んで売るなどの犯罪行為が問題になっているという(WWDジャパン 2020年11月2日発行 vol. 2160)。今年5月には、コム デ ギャルソンの社員が「コム デ ギャルソン」の古着を転売して書類送検されたことがニュースになっていた。

 メルカリついでに言えば、中古衣料の取引が活況を呈するなかに、中古の化粧品(香水のみならず、口紅やファウンデーションまで)が盛んに取引されているのだが、これは日本特有の現象で、ヨーロッパの知人たちに聞いてみたところ、激しく拒否反応を起こす人が多かった。日本は清潔な国ということになっているが、衛生という観念に関しては理解しがたい特殊なところがある、と指摘した人もいる。おしぼりで口を拭うという日本でよく見られる行為も、ナプキンクロスで口を拭くことが常識である文化圏から見ると、不衛生きわまりない行為と映るようである。

 ちなみに、他人の使いかけの化粧品を買う消費者の理由は一様ではない。学生への聞き取り調査によれば、「新品を買う前に、まず同じ品番の中古で実際の色味を確認するため」という表向きの理由のほかに、「とにかく少額でも節約すること」が第一の行動基準となっているためであることが多い。衛生観念の問題よりも大きくのしかかる経済的な問題もまた、そこにあるのだ。中古品を使うことで循環型経済に貢献するといった高邁な理想を追うどころではない経済的な切迫に苦労する若い世代も、少なくないのである。

 そんな日本の闇も浮き彫りにしながら、メルカリは、2021年6月期第一四半期の売上高を221億円5600万円(前年同期比52.3%増)と発表した。