次世代型店舗を創ったパルコのマーケティング哲学

アフターデジタル時代に進化するマーケティング最前線 Vol.1

JBpress/2020.4.13

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甲斐:2019年11月には、渋谷PARCOを約3年にわたる建て替え工事を経て開業されました。デジタルテクノロジーをふんだんに活用された新しい体験提供店舗となっており、5階で展開しているオフラインとオンラインが融合したオムニチャネルショップゾーン「PARCO CUBE」も注目されていますが、従来の考え方とは異なっている点が興味深いです。 

2019年11月に開業した新生「渋谷PARCO」の5階に設けられた「 PARCO CUBE」

:まず、従来とは違う点について説明します。単に購入するだけならオンラインの方が検索しやすく、ストレスも少ないことは明らかです。オムニチャネル化を進めるには、店舗の役割が進化しなければならないと私たちは考えています。

 わざわざ店舗に来るお客様はコーディネートの提案をしてほしいと思っているかもしれませんし、商品に実際に触れて納得して購入したいと思っているかもしれません。一言で言えば接客であり、その実店舗ならではの価値を最大限に引き出す必要があります。

 そこで、今後の方向性を提案する売り場として展開しているのが「PARCO CUBE」です。出店する11店舗は、それぞれ従来の約半分の売り場面積のため店頭在庫は戦略商品に絞り込み、その他の商品を購入したいお客様は店頭にあるサイネージやタブレットから、「PARCO ONLINE STORE」内の商品を検索し購入ができます。

 従来の「PARCO ONLINE STORE」では店舗の在庫を販売していますが、「PARCO CUBE」では、出店しているショップのオンラインストアの在庫データを連動しています。ここが今までとは違う新しい点です。

 決済はオンラインであってもあくまでも接客はリアル店舗なのです。今後はリアルとECの売上比率などを検証し、出店いただいているブランドさんと一緒に次の展開に生かしていきます。

甲斐:その他にも新しい体験提供がいくつも企画されています。

:もう少しPARCO CUBEの話を続けますが、先ほど申し上げたサイネージやタブレットは詳しく話すと、お客様のスマートフォンと連動します。

 ディスプレイに表示されるQRコードをスマートフォンで読み取っていただくと、サイネージで選んだ商品情報がスマートフォンに転送されるようになり、選んだ後はスマートフォンでお買い物ができる仕組みになっています。

甲斐:これもまさにリアルとデジタルの一貫した融合ですね。 

「PARCO CUBE」内に設置されたサイネージ