ネスレにおける令和時代の顧客問題解決法

アフターデジタル時代に進化するマーケティング最前線 Vol.2

JBpress/2020.4.13

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<Brand Owner>
ネスレ日本株式会社
専務執行役員
チーフ・マーケティング・オフィサー
石橋 昌文氏

<Interviewer>
株式会社日本HP
甲斐 博一 

甲斐:「体験創造マーケティング」ブランドオーナーインタビュー企画の第2回となる今回は、ネスレ日本の専務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)の石橋 昌文氏にご登場いただきます。

 ご存じの通り、ネスレは世界最大の食品・飲料会社で、ネスレ日本はその日本法人です。同社の高い収益性を支えるのが、日本企業とは一線を画すマーケティングに対する考え方とその実行力です。「ネスカフェ アンバサダー」や「キットカット」受験生応援キャンペーンなどの事例を基に、その独自性や優位性を明らかにしていきます。

今年は「ネスカフェ アンバサダー」の強化にフォーカス

甲斐:最初に、CMOとしての石橋さんの役割・ミッションについて伺います。

石橋:弊社の場合、各事業部門がマーケティングの役割を担っています。例えば「ネスカフェ」については飲料事業本部が、事業部としての売上目標や利益目標を立て、それらを達成するためのさまざまなビジネスプランを考え、マーケティング活動全般を行っています。

 各事業部門がマーケティングの主体としてありながら、われわれファンクションチームがマトリクス構造でビジネスを支えていくという組織構造になっています。

 私が本部長を務めるマーケティング&コミュニケーションズ本部は、メディアプランニングやパッケージデザインの開発、広報、パブリシティー、デジタルマーケティング、マーケティングリサーチ、それから消費者との直接的なコンタクトを担うコールセンターといった各分野の専門家チームを持ち、各事業部のビジネスをサポートする形になっています。 

ネスレ日本株式会社 専務執行役員 チーフ・マーケティング・オフィサー 石橋 昌文氏

甲斐:マーケティング活動においてネスレさんが特に重要視していること、それに基づいて現在、注力している取り組みがありましたら教えてください。

石橋:重要視しているのはもちろん、各ビジネスを成長させることです。飲料事業について言えば、今年は「ネスカフェ アンバサダー」の強化にフォーカスを当てています。

 長期的なトレンドとして人口が減少し、飲料・食品の消費自体が減っています。そうした中でここ数年、定年延長の流れや不景気、人材不足なども相まって、共働き家庭が増えています。そうすると、家庭の中でのコーヒーの消費がさらに減っていくわけです。

 従来型のビジネスは小売店経由で「ネスカフェ」を売るというものです。「ネスカフェ」は家庭内でのシェアはナンバーワンですが、家庭外では低い。では、家庭外のどこでコーヒーが飲まれているかというと、6割ぐらいがオフィスです。

 そこでオフィスに「ネスカフェ」を流通させる方法があれば、家庭内で減っていく消費をオフィス需要でカバーできるのではないかと考え、2012年以降、「ネスカフェ アンバサダー」というサービスをスタートさせました。現在、約48万オフィスに導入していただいています。