ネスレ日本、「21世紀型イノベーション」実現の道

「ネスカフェ アンバサダー」の発想はどう生まれたか

JBpress/2019.5.7

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ネスレ日本株式会社 代表取締役社長CEO 高岡浩三氏

※本コンテンツは、2019年3月1日に開催されたJBpress主催「Digital Innovation Forum 2019 <春> ~デジタル変革によるイノベーションの実現~」での講演内容を採録したものです。

新興国依存モデルから脱却し
先進国であっても成長できるモデルを追求

 日本は今、年間35万人のペースで人口が減少しています。いわば都市が毎年1つずつ消えていくような特別な市場となっているわけです。とりわけネスレ日本のような食品メーカーには非常に厳しい市場だと言えます。一方、グローバルなネスレグループとしての業績は過去10年、20年の間、非常に良好な状態を維持してきました。利益面を見ても、極めて優秀な高収益体質を築いてきたわけですが、その内実、近年は新興国依存に陥っていました。先進各国の需要が漸減する中、それを超える需要の伸びを新興国で得ていたことにより収益を得てきたのですが、いずれは新興国も豊かになって先進国がたどったのと同じ道を歩み始めます。

 いち早く「新興国依存モデル」から「先進国成長モデル」へと脱却しなければいけない。そんな危機感が広がるスイスの本社に、私は明言してしまいました。「日本がその解決の先鞭をつける」と。決して自信があったわけではないのですが、ネスレ日本が国内市場においてもグローバルな組織においても、その存在意義を示し続けるためには、避けては通れない挑戦だったのです。「高齢化と人口減少により縮小しつつある先進国市場において、持続的な利益成長モデルを確立する」。それがネスレ日本のテーマとなったのです。

 このテーマを達成するための鍵は何かと考え抜き、到達した答えが「マーケティング&イノベーション」でした。20世紀のマーケティングとは異なる21世紀のマーケティングを見つけ出し、実行しなければならない。そのためにイノベーションは必須なのだと。では「イノベーション」とはいったい何なのか? この言葉をわれわれは簡単に口にしますが、実はアカデミックな領域でも明確な定義づけはなされていません。

 そこで、誰にでも理解できる考え方で整理していこうと取り組み、見つけ出したのが「イノベーション」と「リノベーション」とを分けて捉えていくという発想でした。そして、両者の違いを私たちはこのように決めました。「お客様が認識している問題を解決するのはリノベーション、お客様が気づいていない問題、あるいは『解決できっこない』と諦めているような問題に答えを出すのがイノベーション」と。