今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登
“驚き”と“フレッシュさ”
毎度のごとく、別角度から入っては無理やりテーマと結びつけることですっかりお馴染みとなった当連載。しかし今回は直球で臨ませていただきたい。なぜならテーマは、ファッションやモノに興味のある者であれば誰もが気になる“コラボレーション&別注”。無駄な口上が必要ないということもご理解いただけよう。
さて、双方の違いについては以前にも述べたが、ここでおさらい。まずは前者、今では一般的に使われているコラボレーションから。こちらは同業種/異業種と“共創したもの”を指す。これに対し、別注は特別注文の略称。既存のアイテムに、通常品にはない独自のアイデアを加えて“作ってもらったもの”をこう呼ぶ。同意に扱われがちだが意味合いは異なるため、ナレッジとして覚えておきたい。
では、この両者に共通するモノとしての本質とは。それは“驚き”と“フレッシュさ”なのではないだろうか。「アレとコレが!?」という関係性とストーリー、「アレがこうなる!?」というデザインとギミック。それらが複雑に絡み合うことで1+1が3にも4にもなり、我々の心を躍らせる。ここで取り上げるプロダクトも、どこを切り取り天秤にかけようと、驚きとフレッシュさの割合は50:50。かの大谷翔平選手の偉業にも負けぬ素晴らしき逸足たちをご覧あれ。
1. White Mountaineering×Reebok「CLUB C 85 VINTAGE SLIP-ON」
定番コートシューズを洗練された佇まいのスリッポンに刷新
大胆なアレンジが定番に新鮮な驚きをもたらす。その伝でいえば本稿の幕開けにこれ以上の適役はない。ホワイトマウンテニアリングの手によってミニマルに姿を変えた「クラブC 85 ヴィンテージ スリッポン」である。
デザイン、実用性、技術の3つの要素をひとつの形にしたファッションウェアを発信し、技術面における専門知識と革新的デザインで支持を集める同ブランド。“Destination”をテーマに掲げた2024-2025秋冬コレクションでは、デザイナー自身が日常生活のなかで移動する際に目にした風景を着想源としている。
ゆえに当モデルにおいても、クラシックなコートシューズをスリップオンスタイルに仕立てることで洗練さを引き出し、日常使いしやすいようにアレンジ。ホワイトとブラックの単色で構成しながらも、素材をパテントやスウェードで切り替えることで奥行きのある表情を生み出し、足元にさりげなく主張を忍ばせる。