「こんなに悔しいのは初めて」
中国に近づいていることを示しているのは、この団体戦ばかりではない。
昨年の世界選手権シングルスでは準々決勝で早田が王芸迪を破り、最終的に銅メダルを獲得した。中国の選手から勝利をあげて表彰台に上がるのは実に58年ぶりのことであった。
選手たちも中国勢との戦いに手ごたえを感じている。世界選手権団体戦後、平野はこう語っている。
「今までは負けてもどこかで『しょうがない』という気持ちになってしまった部分はあったのですが、こんなに悔しいのは初めてだと思います」
悔しい、という言葉が出るのも勝負に持ち込めるところまで来たと感じているからにほかならない。
早田の言葉も手ごたえを得たことを示していた。
「ここまで競った試合ができたのは自分たちの成長かなと思います」
卓球は長年にわたり、組織だった強化を行ってきた。
1980年代、普及と育成を目的に小学生以下をはじめとする年代別の全国大会が設けられ、2001年には、小学生のナショナルチームを結成し合宿を開催するなど育成に力を注いだ。
一方で、幼少期から猛練習を積み重ねて台頭する選手たちもいた。その両輪があって全体としての強化が進んだ。
やがて国際大会で好成績をあげるようになると、中国を倒すことが卓球界全体の目標となっていった。中国から指導者を呼んで、あるいは中国に渡り彼の地ののリーグに参戦して成長を志す選手もいた。
そして少しずつ中国勢に食い下がる選手が現れ、今日に至っている。
パリオリンピックのシングルスは早田ひな、平野美宇。団体戦では張本美和が加わる。その団体戦で日本は第2シード。第1シードの中国とは、順調に勝ち上がれば決勝であたることになる。
シングルス、団体戦双方で悲願をかなえることができるか。新たな歴史を築くべく、選手たちは臨む。