マヤ文明をさらに体感

 マヤ文明が体感できる遺跡をもう少し紹介しましょう。

 ぜひ訪れていただきたいのが、エル・カスティーヨの北にある「球戯場」です。ここではサッカーのように手を使うことは禁止で、石でできた輪にボールを通す競技が行われていました。2チームに分かれて競いますが、スポーツではなく豊作を祈る神事で、試合が白熱するほど雨が降って豊作になると信じられていました。

 競技で勝ったほうが生贄として神に捧げられたとも、負けたほうが生贄だったとも伝わり、正確なことはわかっていません。しかし、古代マヤではこの神事が盛んに行われ、ほとんどのマヤ遺跡に球技場が存在しています。そのなかでも「チチェン・イッツァ」の球戯場は、最大規模のものです。

 また球戯場は両側に壁があることからエコーが響き、168m先の神殿まで声が届く仕組みになっていたそうで、その音響効果を計算して建築したマヤの技術がいかに高いかがわかります。

ボールを通す石でできた輪 カレ・トール・オルセン, CC BY-SA 2.5, via Wikimedia Commons

 もうひとつ、マヤ文明の高度な技術がわかる遺跡が「旧チチェン」にある「天文台」です。エル・カラコルとも呼ばれる天文台は、約9mの岩の上に建設されています。天文台の高さは約13m、中心部に螺旋階段があり、ドーム部にあるいくつかの窓は天体観測用です。西側の窓は春分、秋分の日の日没、月が最北端に沈む時の角度に造られていることからマヤ人は太陽、月、星などからかなり正確な暦を作っていたといわれています。

天文台 写真=フォトライブラリー

 さらに見逃せないのが、エル・カスティーヨから歩いて15分ほどのところにある「セノーテ(聖なる泉)」です。ユカタン半島は石灰岩の大地でできており、その地下水脈が陥没してできた池をセノーテといい、周囲にもいくつかのセノーテがあります。チチェン・イッツァのセノーテは直径60m、水深80mあり、雨の神チャックが住むと信じられていました。セノーテには女性や子どもなどが雨や豊作を祈る際、神の声を聞く生贄として放り込まれたとされています。

チチェン・イッツァのセノーテ 写真=フォトライブラリー

 また、断崖絶壁の崖はよじ登るのが難しく、多くの人々が命を落としたそうです。アメリカの探検家エドワード・トンプソンが潜って調べると、たくさんの人骨や財宝が見つかりました。

 聖なる泉に至る道には露店が並んでおり、マヤ暦のカレンダーや遺跡の置物といったマヤ文明を象徴するお土産や、カラフルな食器、置物などがカンクン市内よりお得な値段で買うことができます。