いちばん最初に思いついたグループナンバー
この新プログラムにとどまらず、ショーの中で2人はさまざまな可能性を示した。
前半の最後に配されたのはグループナンバーの『ポエタ』。2007年世界選手権での演技をはじめ、ステファン・ランビエールの代表作とも言われる作品を演じたのは、ランビエール、アンドリュー・ポジェ、高橋と村元だ。荒川が実現に至った経緯を説明する。
「いちばん最初に思いついたグループナンバーです。哉中ちゃんが(クリス・リードと)現役時代に滑ったのもすごく大好きでしたし、ステファンの代表作でありました。大ちゃんにはフラメンコとかタンゴとかそういった系統のものを滑っているのが見たいという希望がスケートファンにたくさんあって、私もその1人で。そこでこれは絶対にやってほしいな、と」
4人それぞれに持ち味を、魅力を発揮したナンバーにあって、村元は指先まで行き届いた表現を見せる。
そして高橋はステファンとの「ほんとうにステップ対決みたいな」(荒川)という、対角線上に陣取ってのステップを披露する。両者の存在感もさることながら、高橋の、一歩も引かぬかのような気迫と力強さは圧巻だった。ショーにおける屈指の場面を創り上げた。
この2つにとどまらず、2人が氷上で滑る時間があった。新プログラムで見せた2人ならではの表現とこれから、さらにはそれぞれが各パートで示した表現の豊かさは、2人としての、そして高橋、村元それぞれのさらなる可能性を示していた。
そういえば荒川のナンバーの振り付けは村元が担ったという。
「振り付けしていただいたのは実は3作目なんですけれども、シングルスケーターとしてのキャリアもあるので、シングルの動き、ダンサーとして培ってきた幅の広いジャンルを乗りこなす、哉中ちゃんの身のこなしが大好きで、哉中ちゃんにお願いしたいなと思いました」(荒川)
競技生活に区切りをつけて出発した中で過ごした公演での新プログラム、それぞれの演技は、まるで解き放たれたかのようであり、2人の新たな始まりのようでもあった。