直営精肉店から仕入れる最高級米沢牛のフルコース

夕食は食事処で。料理長による季節がわりの献立が好評

 リピーターがこよなく愛するのが、夕食に登場する米沢牛づくしの創作懐石料理だ。宿直営という大正12年創業の「米沢牛黄木」から最上級の米沢牛を仕入れ、季節替わりのオリジナル献立で提供する。

米沢牛づくしの夕食。旬の素材と組み合わせた米沢牛の貴重な部位の献立が続く。ラウンジの一角には酒蔵があり、地酒や地元ワインなど料理とのマリアージュが楽しい

 米沢牛は、神戸牛、松阪牛と並ぶ日本三大和牛のひとつ。米沢市を含む山形県置賜(おきたま)地方で飼育された黒毛和牛で、生後32ヶ月以上に限定される。きめ細かい霜降りと脂の質のよさが特徴で、とろけるような食感とうま味は感動ものだ。

山形名物の芋煮をはじめ、土地の味覚を盛り込んだ朝食

 朝食も充実。器の色やデザインを一人ずつ変えているのも細やかな演出だ。ふたりのおしゃべりがいつも以上に弾むのは、心地よい時間の証拠。安らいでいるから、目の前にいる相手を思いやる気持ちが芽生えるのかもしれない。

女将さんとのおしゃべりを楽しみに訪れる常連も多い

 朝食後はラウンジで珈琲のサービスがある。地元焙煎のフレッシュな珈琲豆を、女将さんやスタッフがハンドドリップで淹れてくれる。おしゃべりをしながら、心おだやかな、ふたり時間は続く・・。

茅葺屋根が土地の歴史を物語る白布温泉

 時間があれば温泉めぐりをぜひ。「時の宿 すみれ」をはじめ、米沢市内の温泉旅館全24軒で構成する「米沢八湯会(よねざわはっとうかい)」の活動がユニークだからだ。湯めぐりや食のイベントなどを企画して地域を盛り上げる。「米沢八湯会」のはじまりは、東日本大震災による地域連携にあったと聞く。

標高1126mにある雲上の秘湯・新高湯温泉からの眺望

「米沢八湯」の魅力は、それぞれの温泉、宿、町並み、そして人が個性的であることだ。小野川温泉は共同浴場を中心に広がる美肌湯の温泉街、新高湯温泉は標高1126mにある通年営業の雲上の秘湯、白布(しらぶ)温泉は豪快な湯滝で知られる歴史の名湯。大平(おおだいら)温泉滝見屋は歩いていく最上川源流の一軒宿、姥湯温泉枡形屋は山肌の野天風呂が名物。滑川(なめがわ)温泉福島屋は自炊部を備える家族経営の宿など、バラエティー豊かな湯めぐりをオススメしたい(大平温泉、滑川温泉、姥湯温泉は春からの営業)。