相手の思いやりを引き出す「恕」という漢字

 自分が犯したミスや失礼をお詫びする際、「ゆるす(許す)」という意味の「恕」という字を用いるとよいでしょう。

 しかも「恕」にはただゆるすのではなく、「相手の立場や心情を自分のことのように思いやって、咎(とが)めずにおく」という、寛容さと優しさのある許しなのです。

 さらに、ゆったりとしたという意味をもつ「寛」をつけて「ご寛恕ください」とすると、「どうかあなたの思いやりのある寛大なお心で、私の過失を咎めずゆるしてください」というニュアンスが加わります。「ご寛恕賜りたく存じます」と言えば、さらに相手を敬う気持ちも表現できます。

 また、同じように「ゆるす」という意味の「宥(ゆう)」を使って、「ご宥恕(ゆうじょ)ください」という言い方もできます。「ゆるす」+「ゆるす」と重ねて許してほしいと願う気持ちを表現する言葉です。

「この度の失礼をなにとぞご宥恕くださいませ」というように使います。

 

ミスをした自分の気持ちを表現する

 丁寧なお詫びの言葉とともに、自分が今、どんな気持ちでいるかを伝えることも大事です。あんなミスをしてしまって恥ずかしい、情けない、という気持ちを伝える表現があります。

「忸怩(じくじ)という言葉は、「忸」も「怩」も心が萎えてボロボロになっている状態を表す漢字です。強く自分を恥じていることが伝わります。

「面目ございません」も、あわせる顔がないくらい情けない、という気持ちが伝わる言葉です。

 悔しさや後悔の気持ちを伝えるのもよいでしょう。

 ただし、「すごく後悔しています」と言われても、あなたの失敗で迷惑をかけられた人にとっては、お詫びの言葉として少し物足りなく感じるのではないでしょうか。

 そんな場合には、「自責の念に駆られています」と、自分で自分を責めている、という表現をしたほうが強い反省と謝罪の気持ちが伝わります。

 また、「念」というのは、その場限りの気持ちではなく、「心の留めて忘れない」という気持ちです。「駆られる」は激しい感情に動かされるということなので「ずっと自分を責め続けています。このことは決して忘れません」という、固い決意を相手に感じさせます。

「臍(ほぞ)を噛む思いです」という言い方も、ものすごく悔いている気持ちを表現します。くれぐれも「へそを噛む思いです」と言わないようにしてください。