光は火の現代的な形

線香花火のように揺れる「ファイアフライ」の連なりがホテルまで続く

 この桁外れな「マウンテンライツ」を作ったのは、光のアーチストであるイギリス人、ブルース・マンロー氏である。2004年にヴィクトリア&アルバート博物館で初公開された「フィールド・オブ・ライト」を皮切りに、世界各地で光のアートインスタレーションを展開しており、今回のニセコでの「マウンテンライツ」は日本での初仕事となる。

 マンロー氏は、光にとらわれている。当初、興味のおもむくままに様々なことを「ふわふわと」やっていたが、ある時から、光のみに集中することにした。白日夢を見たりインスピレーションを得たりするとスケッチブックにアイデアとして描き留め、光を使って経験を再創造する。

 マンロー氏によれば、「光は火の現代的な形」である。誰かと火を囲むことで、ぬくもりや安らぎが増幅し、共感をおぼえやすくなる。焚き火にそのような効果があることは多くの人が経験として知っているだろう。

 マンロー氏は「マウンテンライツ」に願いをこめた。「誰かと共感しあうという人類共通の経験や感情を、光のアートを通して呼び起こしたい」と。言葉にならない感情、人類共通の感情、自分のなかで見失っていたり、ふと気づいたりするさまざまな感情を、誰かと火を囲むことで共有する。そんな経験がもう一度できるようにとの願いをこめ、光のアートとして昇華したのがこのインスタレーションなのである。マンロー氏の願いは、少なくとも私にはたしかに届いた。(続く)