トレンドに流されすぎないエヴァの流儀

 筆者は普段絵を描く仕事もこなす。だからこそ痛感することなのだが、2Dキャラのデザインは早くて5年で古くなる。新しい絵柄を必死に取り入れてもすぐに次の絵柄が生まれる。この繰り返しで、流行りに乗り続けるか、普遍的なオリジナルの絵柄を模索するか、そのどちらかを迫られるタイミングが必ず訪れる。

 エヴァは繰り返しの物語だからキャラクター入れ替えはない。主人公は一貫して碇シンジだし、多少のマイナーチェンジはあるとはいえ機体のシルエットや配色は変わらない。

 しかし改めて27年のエヴァのモノ・コトを見つめ返すと、時代に合わせて描き方をガラリと変化させてきたことがわかる。そこでTVシリーズ放映当時のキャラクターデザインに立ち返ると、彼らは流行りの髪型や服装をしていない。だから「最新」を取り入れることが可能なのだ。

 pixivが主催した『エヴァンゲリオン』バトルイラストコンテストなどが顕著かもしれない。受賞者の絵は時代の最先端をいくものだ。RADIO EVAのイメージビジュアルを手がける米山舞さんのイラストなども象徴的だろう。いずれこの最先端も時代感が出てしまう時がくる。その時はまた新たな最先端が描かれる。それが楽しみで仕方がない。

 

「サービス、サービス」の集合地

 取材中、筆者はフィギアやプラモデルやレーシングマシンに注目したが、一方でアパレルを熱心に眺める人もいるのだろう。「好き」のポイントが違ってもエヴァという共通の話題でコミュニケーションが取れる。このレンジの広さもエヴァらしい。

 つい最近、SNSで「新劇場版以降のエヴァグッズはスタイリッシュになってしまいロートルには扱いづらい」という主旨の呟きを見た。確かにオタ活が一般化する以前のグッズは、いかにもなアニメグッズの様相を呈している。

 しかしそういったグッズが消えたわけではない。キャラクターを前面に押し出したクリアファイルやタペストリーなども販売されているではないか。スタイリッシュでさりげなく持てるものも増えたし、従来通りのオタクが手に取りやすいアイテムもある。間口が広がっただけと考えてもよさそうだ。

 それを象徴するかのように、物販コーナーではRADIO EVAのおしゃれなアイテムと一緒に、会場限定の「ラミカ」が販売されている。今やアクスタに覇権を奪われた古のオタクの最強アイテム、ラミカ。令和の時代にその言葉を聞くとは思わなかった。これは長くエヴァを愛してくれているファンへのサービス精神なのだろう。

 これはめんどくさいオタクの言い分なのだが、何でもかんでもコラボをすればよいというわけではない。そこに必然性があることが大切だ。エヴァは数々の分野とコラボをしてきたが、そこを丁寧に扱ってきたのではないかと思う。「このコラボは誰が喜ぶのか」「このコラボでどの層のファンが喜ぶのか」、そういったファンに対する配慮は、まさに「サービス、サービス!」なのだ。

 改めて「博覧会」という言葉の意味を振り返る。

 ”博覧会とは各種の産業、科学技術、芸術文化などの活動の成果や将来の方向を示す製品・模型・パネルなどを展示し、広く一般社会の知見を高め、産業振興を進めることを目的とした催し物である”

 博覧会は将来を見据えた催し物だ。だからエヴァ博も次のエヴァを見据えて催したといってもいいのではないか。新たな広がりがここから生まれるかもしれない。