取材・撮影=みかめゆきよみ

映像作品から派生した「モノ」と「コト」

 これまでのエヴァンゲリオンの「エヴァのモノとコト」を集めた「エヴァンゲリオン大博覧会」が渋谷ヒカリエ9階ヒカリエホールで開かれている。

 2021年に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』にて完結したエヴァンゲリオン。物語の集大成に多くの人が感動の涙を流しただろう。かくいう筆者もその一人。セリフや仕草を確認するために何度も足を運び、来場者特典に釣られ、気がつけば19回も観ていた。同じ映画を19回。アマゾンプライムビデオの配信も飽きずに観ている。もはや狂気としか言いようがない。

 エヴァには人を狂わせる力がある。しかし映像作品だけがそれを牽引してきたわけではない。長い沈黙期間もあった。それでも人気を維持できたのは、映像作品から派生した「モノ」と「コト」によるところが大きい。庵野秀明監督の『新劇場版』シリーズは完結したが、こうして新たな催しが行われファンに供給をし続けている。「エヴァはこれで終わりなのか? 否、ここから始まるのだ」と呼びかけているかのようだ。

 27年という年月は短いようで長い。四半世紀も過ぎれば歴史が生まれる。その歴史を「モノ」と「コト」で振り返るというのだから圧倒的な物量で迫ってくることは明白だ。しかも今回はアニメーション資料の展示ではない。あくまでそこから派生したグッズ・コラボレーション・イベントが中心ということである。資料やパネルによるおとなしい展示になりようがなく、渋谷という街の特性を多分に含んだ「新しい」試みとなった。

 前置きはさておき、実際の展示を紹介しながら、エヴァのモノとコトの歩みを振り返ってみたい。

 

「エヴァらしさ」の追求から生まれし「モノ」

 会場に入るとまず公式の映像媒体および資料集等が展示されている。これがいわゆる「エヴァらしいデザイン」の根幹ということなのだろう。TVシリーズから完成された唯一無二のデザインは今だ色褪せることはない。特に秀逸なのはTVシリーズのレーザーディスク盤だろう。極太明朝体で名台詞が散りばめられたこのジャケットにエヴァらしさが集約されている。

 それを踏まえて次のエリアに足を向けると、歴代のクリアファイルが並んだ空間に通される。「たかがクリアファイルと侮るなかれ」と主張しているかのようだ。クリアファイルは時代による流行り廃りがなく、一定の人気を保つアイテムだ。キャラクターの絵を存分に堪能できる上、実用性もある。単体のグッズとしても売れるしノベルティにもなり、ポスターのように飾ることができる。まるで美術展の展示のよう。

 メインフロアで真っ先に目に飛び込んでくるのはフィギュアを集めたスペースだ。エヴァといえばフィギュアと言っていい。ヒロインたちが身に着けるプラグスーツのデザインが秀逸だからだろう。健全なエロティシズムの最適解、造型魂の集合地……なんとも罪深い。ロボット好きから美少女好きまでフォローしている。

 フィギュアと言っても切り口はさまざま。エヴァの機体に徹底的にこだわり抜いたものから、2Dキャラクターを破綻なく立体化したものまである。エントリープラグインテリアさえも立体再現の対象だ。

 最も古いものから順を追ってみていくとフィギュア造形の進化の過程を見ることができる。今やゲームセンターのプライズですら一定のクオリティが担保されているが、そこに至るまでには匠たちの切磋琢磨があったのだ。ハイクオリティのフィギュアともなると1万円を超えるが、むしろ「その値段でこのクオリティのフィギュアがご家庭に!?」と驚かずにはいられない。いい時代になったものだ。

 もちろんこのレベルになるとそれなりのお値段になる。エヴァの大きさは特に決まってはいない。自由な解釈で作れるのがエヴァらしさと言える。人体に近い造形のもの、いかにもロボットらしいもの、ソフビ人形のゆるいデフォルメなど、振れ幅が大きい。