シューズは完全に〝厚底〟へシフト

 ランナーにとって最も重要なシューズは従来の薄底から完全に〝厚底〟へシフトした。ナイキが2017年夏に一般発売した厚底シューズを履いた選手たちが快走を連発。その後、箱根駅伝ランナーの足元は大きく変わった。

 厚底シューズ登場前の2017年大会は出場210人中、アシックスが67人(31.9%)、ミズノが54人(25.7%)、アディダスが49人(23.3%)、ナイキが36人(17.1%)、ニューバランスが4人(1.9%)だった。

 そこからナイキが年々シェアを拡大していき、前回は出場210人中201人がナイキで出走。その着用率は95.7%まで到達した。ナイキ以外のメーカーはわずか9人。2017年大会でシェアナンバー1だったアシックスを履いていた選手はいなかった。

 しかし、各メーカーが厚底タイプの新モデルを続々と登場させていることもあり、ナイキが少しずつシェアを落としている。一方、アシックスが反撃を開始した印象だ。

2021年11月7日、全日本大学駅伝8区を走る駒大の花尾恭輔(左) 写真=SportsPressJP/アフロ

 11月の全日本大学駅伝では1区で区間賞を獲得した駒大・佐藤条二(1年)と優勝ゴールに飛び込んだ駒大・花尾恭輔(2年)がアシックスを着用。10月の箱根予選会でも2年連続通過を決めた専大は12人中5人がアシックスの厚底レーシングシューズ『METASPEED Sky』を履いていた。

 正月決戦はシューズメーカーの〝陣取り合戦〟にも注目したい。

 

使い方の幅が広がった腕時計

 近年、ランナーたちのギアで重要性を増しているのが腕時計だろう。以前はタイムを計測するための使用がメインだったが、GPSウォッチが登場してから使い方の幅が広がった。前回、往路Vを成し遂げた創価大はガーミンのGPSウォッチを駆使して強くなったチームだ。

 榎木和貴駅伝監督が就任した2019年からレンタルというかたちながら『フォアアスリート745』というモデルを軸にガーミンのGPSウォッチが選手たちに提供されている。

2021年10月10日、出雲駅伝3区を走るフィリップ・ムルワ(創価大)。腕時計に注目 写真=SportsPressJP/アフロ

 箱根駅伝で戦うためには月間走行距離が「750㎞」は必要だと感じていた榎木監督はGPSウォッチで選手たちの走行距離を〝可視化〟した。そのデータは選手全員がグループ登録しているアプリで共有。月間走行距離はランキングとして出るため、選手たちはゲーム感覚で競い合いながら距離を踏んできた。心拍数も計測できるガーミンは、運動強度の目安を5段階のゾーンで知ることができる。ただ走るだけでなく、運動強度のバランスを考えながら強化を進めてきたのだ。

 東京国際大や國學院大などもチームでGPSウォッチを活用。個人でGPSウォッチを使用している選手も急増しており、最近では箱根ランナーに欠かせないアイテムになっている。

 また最近はネックレスを着用している選手も増えている。一見、チャラく見えるかもしれないが、身体のコンディショニングを整える狙いがあるのだ。選手たちが主に使用しているのは磁気医療アクセサリー。ネックレス内の磁気が血中のヘモグロビンのなかにあるヘムの成分に働きかけるため、血行が促進される。首や肩のコリをやわらげ、パフォーマンスの向上が期待できるのだ。

 なお青学大の選手はフィギュアスケートの宇野昌磨らトップアスリートが愛用しているコラントッテというメーカーのものを使用している。

AOGAKU × Colantotte 2021 スペシャルムービー - 青山学院大学陸上競技部

 シューズだけでなく、ランナーを取り巻くアイテムは年々進化している。気象条件に恵まれれば、区間新記録、大会新記録の誕生が大いに期待できるだろう。