2シーズン目の進化

2021年11月12日、NHK杯でRD『ソーラン節&琴』を演じる村元哉中、髙橋大輔 写真=長田洋平/アフロスポーツ

 アイスダンス2シーズン目となった今季、残してきた成績もさることながら、目をひく点がある。

 村元との結成当初、期待を集めたのは表現の部分だった。髙橋の持ち味であるステップワークや人を惹きつける力、また村元も表現面に秀でたところがあったため、そこに着目された。

 昨シーズンから今シーズンに移り、示しているのは技術の向上だ。例えばリフト。もともと体格的に両者に大きな違いがないことから、髙橋が村元を持ち上げられるのか懸念されていた部分で、昨シーズンは不安定な面もあった。

 だがNHK杯では下半身から安定感があった。リフトやスピンのレベルも昨年のNHK杯と違い、最高レベルの「4」を得た。この1点からも見えるように、技術力を伸ばしたのである。その土台の上に、シングルのショートプログラムにあたるリズムダンスの『ソーラン節&琴』では和のテイストとヒップホップの融合した曲を演じ、シングルのフリーにあたるフリーダンスではクラシックバレエの名作『ラ・バヤデール』を演じた。2人に備わる表現力は、技術の伸びによって、より発揮されていた。

2021年11月13日、NHK杯でFD『ラ・バヤデール』、村元哉中、髙橋大輔のリフト 写真=長田洋平/アフロスポーツ

 あらためて、髙橋のキャリアを思う。競技生活から退いても再び戻り、新たな挑戦を始める原動力は、かねてから髙橋本人が言葉にしてきた「スケートをしていきたい」「スケートが好き」に尽きるだろう。

 一方、そうした思いがあっても、それを現実にするのは簡単ではない。年齢を重ねるにつれ、身体面の維持も容易ではなくなり、新しい技術を身に着けるのもまた難しさを増していく。

 にもかかわらず、挑戦をやめない。努力を惜しまない。安定感のあるリフトの下支えとなっているのは見るからに変化がはっきりと分かる筋肉の増した身体だが、そこにも努力の証がある。スケートへの情熱と、それを実践することで新たな道を切り拓く姿に、髙橋の真実がある。村元というよき理解者をパートナーに得たこともまた、大きいだろう。

 2人が目標として掲げるのは、北京オリンピック出場。ただ、国内には全日本選手権3連覇をはじめ近年のアイスダンスを牽引してきた小松原美里、小松原尊組がいて、しかも出場枠はわずか1つでしかない。

 ただ今は、自分たちの演技のさらなる向上を志す。

「もっとレベルアップすることができると思いますし、思い切ってやるだけです」

 12月23日に開幕する全日本選手権へ向けて、日々、練習を重ねる。