文=甲斐みのり 撮影=平石順一

「笹一葉 15個入」の一部。左から鯖、炙りサーモン、煮梶木、ずわい蟹 発売元=神田明神下 みやび

消費期限48時間の理由は「笹の葉」

 1年半以上、両親に会えていない。ときどき電話でやりとりしてはいるものの、富士山の麓のまちで、できる限り外出を控えて静かに日々を過ごす父と母が健やかでいるか、いつも頭から離れない。本当ならば旅や食事に招待したり、孝行できればいいのだけれど、なかなか叶えることができないことを気にしていた。そこで、二人が好きなお寿司を東京から静岡まで届けることができないか調べるなか、〈神田明神下 みやび本店〉に辿り着いた。

 情緒漂う黒塗りの壁の店舗があるのは、江戸城内の料理番「御台所御賄方」の武家屋敷があったことから、「神田御台所町」と呼ばれていた神田明神下の路地。カウンターや小上がりの席で、粋な江戸の味を伝えるべく、江戸前料理を代表する、江戸前寿司や江戸前天麩羅を味わえる。さらには、都内の主要百貨店やターミナル駅、歌舞伎座などでで販売するお弁当も華やかで、目で見て楽しいと評判だ。

 通常のお弁当は、作ったその日が消費期限というのが当たり前だが、みやびには、消費期限が48時間の「笹一葉」が品書きに並ぶ。もともとは店主が恩師からお弁当を送ってほしいと頼まれた際、お弁当を発送するのは難しいいけれど、それまで細工寿司やちらし寿司弁当を作ってきた経験を活かして、日持ちがする酢飯を使うことを考えたそうだ。

 加えて、安全性を高めようと、一口サイズの握り寿司を抗菌効果のある笹の葉で包んでみたところ、趣を増し手土産にもぴったり。あおあおとした青笹の香りも心地よく、今では笹一葉の専門店「笹一葉本舗」ができるほど、みやびの顔として知られている。

 シャリに使っているのは、福島県西白河郡中島村の契約農家が阿武隈川の清流で丹精込めて育てる、ミルキークイーンとコシヒカリのブレンド米。酢は、江戸時代の寿司と同じように、酒粕を⾧期間じっくり貯蔵熟成して発酵させた、横井醸造工業株式会社のまろやかで甘味のある赤酢を使用。全ての具材に味がついているので、醤油をつける必要がなく、昔ながらのシャリと具材そのものの風味を、存分に堪能できる。

 

ネタは全部で15種類

 一般的に笹の葉や柿の葉で包んだお寿司は、ほとんどが押し寿司なのだけれど、笹一葉は握り寿司をそのまま笹で包んでいるので、口の中でしゃりがほろっとほどける。

「笹一葉 15個入」3240円(税込・送料別) 販売元=神田明神下 みやび 

 ネタは、海老、ずわい蟹、いくら、筍、椎茸、黒毛和牛、煮梶木、帆立、高菜、南高梅、炙りサーモン、穴子、さば、鶏そぼろと、基本の14種類に加えて、春は若狭湾小鯛、夏は鯵、秋は松茸と、季節ものが加わり15種類。私は両親への贈り物にも、自宅で味わう用にも、贈答用の15個入を選んだけれど、個数はいくつかパターンがあるので状況に応じて選ぶことができる。

 また、みやびのオフィシャルサイトから注文すると、東京都・神奈川県(一部)・埼玉県(一部)・千葉県(一部)と配送範囲が限られているので、静岡の両親に送るときには、楽天市場からクール冷蔵便(北海道、九州、沖縄、島しょ部は発送不可)で手配した。

 歌舞伎好きの父は、歌舞伎役者にもおなじみの手土産と聞いて大喜び。今度は家族みんなで味わおうと約束した。