徹底的な合理化による体質改造と、抱擁的安心の提供
しかし、自治をしっかり運営するためには、まだまだ無駄な作業がありました。徹底的に体質改造し、自治を促し、放置するのではなく「しっかり見守られている」という安心感を社員に提供する取り組みに移行したのです。前項で述べた「体質改造と抱擁的安心の提供」です。
まずは無駄な業務を徹底的に排除し、自動化・合理化を進めました。原点に立ち返って、今まで定常的に行ってきた業務についても、本当に必要なのかどうかを見極めながら整理しました。残った仕事はプロセスを見直し、最終的に自動化しました。
例えば上図にあるように、アウトプットを出すまでに八つの作業が必要だったものも、当社の「DataSpider」という製品を活用してデータ化することにより、業務を簡素化・自動化できました。このような例をいくつも社内に展開し、徹底的に断捨離して合理化しました。
さらに、社員に安心感を提供するためには、予見と対策の早期化に取り組みました。人間ドックや健康診断に例えると、年に1回だったチェックを日々行うことで迅速に異常を検知する、といったことになります。
例えば、下図は「DataSpider」とBIツール「tableau」を活用し、ある事業部の現状を可視化した画面です。売り上げ計画に対して、パイプラインは充足できているのか、どれくらい売り上げが進んでいるのかなど現状を可視化し、社内で誰もが共有できる情報となっています。
さらに、各事業部門がどういったプロジェクトを抱え、計画に対して人件費の原価状況がどうなっているのかも一目瞭然になっています。停滞しているプロジェクトは、予定の原価を超過する傾向にあるので、ここでチェックすることができます。プロジェクトにアサインメントされているメンバーの時間外労働の傾向も可視化されており、残業時間が36協定に抵触していないかなども確認できます。
これまでは、残業は「罪」であり、犯人捜しをするように長時間残業している人を見付け出していましたが、長時間残業は働く仲間たちの「SOS」だと捉えるようにしました。経営会議でも上の画面を確認し、プロジェクトの進行状況、メンバーへの負荷の確認、対策をその場で議論して決定し、すぐに行動に移しました。社員が悲鳴を上げる前に、時間に現れる兆候で、問題が発見できるようにしたのです。