「自治という聖域の醸成」セゾン情報システムズの組織風土改革

 「組織風土改革」と銘打って活動したわけではありませんが、上意下達の閉鎖的な雰囲気を打開するために、次のようなプロセスで施策を打っていきました。

■管理・制度からの脱却
■共感・共鳴・協働
■権限委譲とノールールというポリシー
■自治という聖域の醸成
■体質改造と抱擁的安心の提供
■ワークスタイルビッグバン
■ファンクションマネジメント

 最初に行ったのは「管理・制度からの脱却」、いわゆるノルマ的に仕事をこなすことからの解放でした。閉鎖的な風土の中で、上司から指示されたことに「やれません」と声を上げられずに苦しむ社員が多くいることが、実態調査から浮き彫りになりました。

 まずは目標(ノルマ)管理の制度を廃止し、次に管理部門をいったん解体しました。管理部門が上から押さえつけて取り締まるのではなく、パートナーとして寄り添いながら歩みたいと、私たちは考えました。

 次に「共感・共鳴・協働」です。トライブ(いわゆるヒエラルキーではない仲間が集まるという理念)をいかに生み出せるかという観点から、まずは人事制度を刷新しました。「制度」という言葉そのものを廃止し、「人事プログラム」と改称しました。

 下図にあるように、旧人事制度では上位に事業計画があり上意下達で下に落としていく、いわゆる目標管理制度を運用していました。100ある事業計画を個人に落とし込んでいましたが、そのやり方はノルマ的だと気付いたのです。新人事プログラムでは、一番下にある事業計画(VISION)にしっかりと共感・共鳴してもらった上で、自身の役割を設定し、自律的に行動し、仲間と協働していくという形に変えました。つまり受動的に動く組織から、能動的に自律自走する形へと促していくことに取り組んだのです。

 各自が役割を認識してトライブが生まれた後は、社員それぞれが自治を守ることを目指す「権限委譲」を進めました。人事プログラムの評価の権限、テレワークやフレックスタイムの運用、人材育成や採用の権限、さらにはラインマネージャーの任免、人事異動まで現場に権限を渡しました。多くの会社が人事権として持っている権限は、ほぼ現場に委譲しました。

 そして過度なルールをつくらない「ノールールというポリシー」を制定しました。ノールールということは社内で大きく発信したわけではなく、私たちが人事として、基準やルールをなるべくつくらないようにしてきたということです。

 現場で働く人々からは「ルールや基準をつくってほしい」という要望が多く出ましたが、私たちはそれらをつくる代わりに、現場にしっかりと寄り添いました。現場に移譲した採用をジャッジできるようにサポートしたり、業務が権限を逸脱しないようにガイドしたりするなど、ガードレール役に徹しました。腹をくくって「自治という聖域の醸成」へとかじを切ったのです。