(デレック ベインズ:オーストラリア政府観光局 日本局長)
オーストラリア出身である私は、何年も前から日本の様々な知り合いに「オーストラリアン・キュイジーヌ(オーストラリアの食事)って何ですか?」と聞かれることがよくある。
一般的にオーストラリアン・キュイジーヌと言えば、新鮮な野菜や果物、独特なバラマンディ魚、サーモン、オージービーフ、ラムはもちろんのこと、300を超える種類のビールや自慢の絶品ワインのことだ。他にもオーストラリアが原産地で今や世界的人気のマカダミアナッツ。過去6万年もの間、先住民たちが料理に使い、健康にも非常に良いとされるスーパーフードのレモンマートル・ハーブなどがある。
このように、いくらでもオーストラリアの美味しい食べ物の一覧表を書くことはできる。しかしその一覧表がどんなに長くてもオーストラリアン・キュイジーヌの説明にはならない。
なぜならオーストラリアン・キュイジーヌは、材料、調理法、環境、歴史、社会的な影響から成り立つ3次元的構造体のことだと思うからだ。
どのような場所で、どんな時間を過ごすか
オーストラリア人にとっては「食べたいもの」を考えるとき、食べ物の種類だけではなく、どのような場所で、誰と一緒に、どんな時間を過ごすか、などの要素も重要だ。不思議なことに「何を食べよう」と「どこで食べよう」の区別がない。