会社と社員の信頼関係構築にも役立つ

 講演では、実際にカオナビを活用しタレントマネジメントを実践している企業の事例も複数紹介された。

 サカイ引越センターでは、記憶に頼る人材管理に限界があり、社員の情報把握が困難になっていたという。社員の適性配置にこだわっていたが、情報不足によりミスマッチ人事が課題になっていた。「そこで、打ち手としてカオナビを利用し、年10回以上のアンケートを行い、社員のパーソナリティーを収集しました」

 カオナビには、社員の自己申告やキャリア情報などについて尋ねる際、ドラッグ・アンド・ドロップだけで、フォームを作成しアンケートができる機能がある。同社ではそれを利用し、社員がどのような知識やスキルを習得したのか、さらに今後のキャリア志向などを尋ねたという。

 といっても、ここまでなら多くの企業でも行っているだろうが、「同社が他社と大きく異なるポイントは、年10回以上もアンケートを行っても社員からの回収率が下がらず、意味があるデータを集め続けられていることです。その理由は、アンケートに答えると、その後にきちんと人事部門や経営がフィードバックを行うからです。それにより企業と社員の信頼関係をつくっているのです」。この信頼関係がベースにあるからデータが集まってくるし、それに基づいた施策も実行できるわけで、「システムを入れて終わりではなく、システムでできることをやりつつも、その後どのように組織人事を回していくかが大切」というのだ。

 次の事例は近鉄グループホールディングスで、社員は出向が多く、ホールディングスとのやりとりなどをする機会が少なく距離感を感じていたという企業だ。特に若手社員には不安を感じる人も多く、「ホールディングスとしてシナジーを生み、エンゲージメントができるコミュニケーションを図ってきたいとカオナビを導入されました」

 従来の人事システムにもデータは入っているだろう。だが、給与や勤怠も付いているような人事システムでの場合、事業会社ごとにプロパーの社員もいて人事制度も異なるので統合は容易ではない。「そこで、社員の連絡先や職務経歴などの情報をカオナビで共有するようにしました。社員が自己申告することで情報を把握したり、意見を吸い上げたりすることができるようになり、出向社員の不安を解消し、離職数を低減することにもつながりました」と佐藤氏。必要な時に必要な人とのコミュニケーションが容易になり、ホールディングスの人事が面談しフォローする環境もつくったといい、カオナビを通じた自己申告により、本人希望も考慮した異動に活用されている。