文=小松めぐみ
浮世絵を通してみる江戸時代の食文化
都内の美術館や博物館が続々と再開するなか、六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーでも「おいしい浮世絵展~北斎 広重 国芳たちが描いた江戸の味わい」が始まった。江戸の食文化に注目しながら浮世絵を見ようという趣旨のもとに集められた作品は、江戸時代後期のものを中心に240点以上。
会場にはさまざまな資料も展示されており、制限時間の1時間以内に見て回るのが大変なほど充実した内容だ。特に歌川広重や葛飾北斎の“東海道作品”などから飲食に関わるシーンを集めた最後の展示室には、旅の気分を思い出す楽しみもあり、つい足が止まってしまう。
展覧会の前後に楽しみたい、江戸好みのランチ
浮世絵の中に描かれている料理は、江戸の庶民に愛された「すし」「鰻」「天ぷら」「蕎麦」「白玉」や、東海道の宿場町の名産品など。展覧会の開催期間中、六本木ヒルズのレストランではそうした料理やコラボメニューが提供されており、鑑賞前後の腹ごしらえにうってつけだ。なかでもおすすめなのが、グランド ハイアット 東京6階の日本料理「旬房」で楽しめる「浮世絵御膳」。
天ぷらや蕎麦、深川飯など、江戸っ子に愛された味を盛り合わせたランチメニューだ。この御膳の魅力は、江戸時代のスタイルを意識したディテールの仕上げの細やかさ。たとえば天ぷらは「旬房」で普段提供しているものよりも厚めに衣をつけて棒揚げにされており、月岡芳年の浮世絵「風俗三十二相 むまさう」の中の天ぷらを彷彿させる。
ブランド米「ななつぼし」の上にのったアサリの醤油煮は生姜風味の甘辛味で、いかにも江戸好み。深川飯は、現在は“炊き込みご飯タイプ”や“汁かけご飯タイプ”などのバリエーションがあるが、「浮世絵御膳」の深川飯はシンプルな昔風のスタイルとなっている。
なんでも料理長はメニューを考案する際、展覧会の企画協力者である林綾野氏の著書「浮世絵に見る 江戸の食卓」を参考にしたのだとか。ちなみに、温かい蕎麦は鰹と昆布の出汁がよく絡むよう、敢えて細めのもの。細いながらもコシのある蕎麦は、専門店も顔負けの美味しさだ。
浮世絵をイメージしたカクテルで余韻に浸る
同じくグランド ハイアット 東京 6階にある「オーク ドア バー」(11:30~21:30)には、浮世絵の世界観からインスパイアされた「和」テイストのオリジナルカクテルも色々。そのひとつの「赤富士」は、葛飾北斎の「赤富士」からインスピレーションを得たというもので、ウイスキー(山崎)の香りと梅酒やクランベリージュースの酸味がよく合う名作。展覧会の余韻を満喫するのに、うってつけである。