文=勝尾岳彦
コロナ収束の見通しが立たない中で
アメリカ合衆国の1日の新規感染者数が5万人を超えたほか、東京の1日の新規感染者数が再び100人の大台を超える日が続くなど、この原稿を書いている7月上旬の時点において、コロナウィルス・パンデミックの収束の気配は一向になく、いったん新規感染者数が減少した国や都市も、感染拡大の第二波到来に警戒を強めている。
やはり、この厄介な感染症に打ち勝つには、しばらく時間がかかりそうだ。そして、コロナ感染予防の手段としてマスクを着けることに抵抗が無かったアジア諸国の人々だけでなく、従来はマスクを着ける習慣が無かった欧米の人たちの間でも、マスクが手放せなくなっている。
トラブル防止用品のバリエーションが拡大
しかし、長時間のマスク着用は、ゴムによる耳の痛みや肌のかぶれなどのトラブルを招くことがある。今年は、今まで私たちが経験したことの無い、「マスクを常に着用している夏」を過ごさざるを得ない。気象庁の発表では、日本全国の6月から8月の気温は平年並みか高いとされ、酷暑の日が続けば一層こういったトラブルが増えることが予想される。
楽天やアマゾンのサイトで検索してみると、マスク着用による痛みや肌のトラブルを防止するイヤーガードという商品が数多く掲載されている。形や色のバリエーションも豊富だ。そのほとんどが、ゴムの部分をカバーしてしまうタイプか、ゴムが直接耳に触れないようにフックなどで引っ掛けるタイプに分類される。さらに、WEBを検索してみると、3Dプリント用のデータをアップロードし、ユーザーが自分で作ることができるものも散見される。
機能だけではなく、周りの人を和ませる
データダウンロード方式をとる中でユニークなのは、人気作品『ONE PIECE』などのフィギュアの製作を手がけてきた、バンダイナムコホールディングスグループの一社アートプレストの“ZERO STUDIO“が手がけた、「ゴムゴムのマスクイヤーガード」だ。
クリエイティブディレクターとして、企画立案から制作ディレクションまで担当したHONNOWの谷村紀明氏は、「世界中で感染症が拡大する中で、ポジティブかつ人の役に立つことがしたかった」と、このプロジェクトを始めた動機を説明する。
プロジェクトチームは、企画立案からデザイン検討、プロトタイプ制作、監修、ローンチまで、約2ヶ月で漕ぎ着けた。3Dプリンターの入力ファイルフォーマットとして一般的なSTL形式のデータを配布し、希望者が自由にプリントできる方式を採用したのは、「感染症の拡大防止に少しでも早く貢献し、ポジティブな日常を作っていきたい」という思いからだ。
希望者は6月20日から7月20日までの期間限定でデータを無償でダウンロードできる。
プロジェクト自体が自主的に始めたものなので、プロモーションにかける予算は無く、まずTwitterで発信した。それでも反響は予想以上で、7月1日時点のダウンロード数はすでに1万4000件に上っている。