談=中野香織 構成=山下英介

服飾史家の中野香織さんが読み説いた〝時代の潮流〟と、そこに基づき選んだ最新のスタイル特集「〝モードの転換点〟として2020年を読む|LOOKBOOK 2020 Spring and Summer」。その第2弾は、スーツやジャケットを未来へと導く「ニューテーラリング」を考察する。

〝ダンヒル〟クリエイティブ・ディレクターのマーク・ウエストン 。〝バーバリー〟のメンズウエアにおけるバイス・プレジデントとして腕を振るったのち、2017年より現職に就任。デジタル世代の若き紳士たちに向けた改革を進めている

カジュアル化の波に抗う、美しき「ニューテーラリング」の旗手

 時代を切り拓くアーティストたちが活躍する一方で、今まで中途半端にトレンドを追ってきたデザイナーは、なにをつくればよいのかわからなくなっているのではないでしょうか? 経済が下降線をたどれば、人は洋服を「選び切る」しかありません。ユニクロのように部品として作られた服で徹底するか、本当に気に入った服を1着厳選するか。その中間をさまようブランドは、もう生き残りが難しいのではないでしょうか。

 サステナビリティという概念が広まってきた現代では、気軽に買って安易に捨てるということ自体に罪悪感が伴います。昔は酷評されていた、チャールズ王太子がツギハギしながら着ているスーツが、今やかつてないほどに賞賛を集めているのも、そんな気分の反映なのでしょう。

 〝ダンヒル〟や〝ディオール〟のように、テーラードを新しい概念でとらえつつも、きちんとつくるブランドが増えているのは、そうした潮流を考えるととても自然なことです。しっかりと仕立てられたジャケットは子供の代まで着られる、サステナブルなものですから。カジュアル化の揺り戻しはくると思いますし、誰でも洋服が作れるようになった今、生き残るのは美しいテーラードを作ることができるデザイナーでしょう。

 

ダンヒル|DUNHILL ジャポニズムの衝撃
ディオール|DIOR 未来のクラシック
ジバンシー|GIVENCHY 不協和音のエレガンス
ボッテガ・ヴェネタ|BOTTEGA VENETA もっとしなやかに
ジルサンダー|JIL SANDER 静謐なるクラフト精神

 

続編「アイデンティティの象徴たち」は、4月20日に配信予定です