事業承継の過程で意見がぶつかるのは当たり前
——現在会長であるお父様と意見がぶつかるのは、例えばどんなときですか。
林氏 意見がぶつかるというよりは、違いを感じた瞬間ではあるのですが、人との距離感の詰め方については、違いを感じる瞬間がありました。ある日、中途採用をしていた際に、一次面接の部屋にいきなり「こんにちは〜」と入って、自分の期待をその方に話していたことがありました。
一次面接の時点で、期待をちゃんと受け止めて活躍してくれる人だったらいいけれど、重荷と思って辞退されることもあるじゃないですか。情熱をぶつける場面・タイミングの違いなどで、意見がぶつかっているかもしれません。
——経営者としてお父様を尊敬しているところは、どこですか。
林氏 父は新しいことを起こすときに、必ず5つのオプションを用意しているんです。1つやってみて失敗しても、まだ4つのオプションが残されている。仮に、その1つが成功したら、もう1つオプションを付け足して、また新たなチャレンジをしていく。僕はまだ経験が浅いから、それだけのアイデアが出てこないんですよ。そこはすごく尊敬していますね。
あとは、信じられないくらいすべてのことが、スピーディー。メールの返信から大きな意思決定まで、何もかも。あまりにもはやすぎて、社内でまったく議論しないまま、モノを買ってくるのは困っているんですけど。でも、そのくらいスピード感がないと、今の時代は生き残っていけないんだなということは、常々感じています。
——歳をとって時代のスピードについていけなくなるという話は耳にしますが、御社の場合は逆なのですね。
林氏 はい。今までギリギリのところで舵を取り続けてきた会長は、経営の感覚が研ぎ澄まされているんですよね。だけど、経験のない僕は、まだその感覚がないので、今は様子を見て、次の挑戦に備えている段階です。