精工の印刷技術が可能にする新たな“食”への取り組み

これからの印刷業界を背負う社長たちの決心

JBpress/2020.4.1

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——新しいコンセプトですね。

林氏 はい。農家の方の中には、野菜の包装資材を買うことがネックになることもあります。だから野菜の袋に広告枠を作って、スポンサーから包装資材代を払ってもらえたら、農家さんは助かるじゃないですか。

 野菜はスーパーの入口付近の一番目立つところに並びますから、広告主さんにとってもメリットは大きい。野菜を買ったら、袋ごと家まで必ず持って帰りますから、“お茶の間まで届くDM”とも言えます。これも新しいビジネスモデルです。

——実際に、この取り組みを始めたのは、いつからですか。

林氏 本生産ができるようになったのは、2019年の年末ですよ。それでもここ1〜2月で、すでに20件以上の案件が決まっているので、滑り出しは順調です。

 これまでデジタル印刷は単価が高くて、野菜の袋にはなかなか使えなかったんです。でもデジタル印刷で帯部分を印刷したものを袋に貼り付けた「オビパック」という技術を開発したことで、豊富なデザインで小ロットでの生産が可能になりました。

――すごい発想で、感心します。

林氏 すべては工夫次第だと思いますが、やはりこの仕事をやりながら食による幸せを人々にどうやって届けるかを常に考えています。そしてそれをどうやったら実現できるか。これが「畑と胃袋を最短距離でつなげたい」という私のビジョンです。

——では最後に、印刷業界で挑戦する次世代の若手社長に向けて、メッセージをお願いします。

林氏 印刷業界には、大手2トップが中心で動いておりそれは業界特性として代えがたい事実ではありますが、そこに依存しすぎているとなかなか自分たちでビジネスをコントロールできないと思います。

 ブランドを持っている企業に直接提案する機会を作ろうと思えばいくらでも作れるはずなのに、でも自ら動こうとする会社はほとんどありません。そんな習慣に縛られていては、新しくて世の中に良いものは絶対に生まれないと私は思うんです。

 あとは、競合とのコラボレーションを恐れないでほしい。僕が社長になってから進めているのは、最大のライバルとタッグを組むことなんです。これまで相手を打ち負かすために使っていた知恵を、お互いのビジネスを加速させるために使ったら、もっといいものができるはずでしょう。

 僕はDscoop(HPデジタル印刷機のユーザーコミュニティ)のチェアマンをさせてもらっているのも、そんな理由からです。コラボレーションによって業界全体をよくしていきたい。

 だから経営者や印刷会社の幹部のみなさんには、勇気を振り絞って、競合の社長と話をしてみてほしいんですよ。同じ悩みを共有できるかもしれないし、もしかしたら自分たちが勝手にライバル視していただけかもしれない。これまでなかった接点ができることによって、絶対に新しい何かが生まれるはずですから。