カーボンユートラル時代のクルマ好きたちへ
そんな今年のオートサロンを、私は自動車メーカーのプレスコンファレンス中心に取材してきた。なお、今回はトヨタ自動車、マツダ、ホンダ、ヒョンデ、スバル、BMW、フォルクスワーゲン、BYD、いすゞの10社がプレスコンファレンスを実施した。
このなかでもっとも興味深かったのはマツダで、なんと代表取締役社長の毛籠勝弘氏が登壇。ロータリーエンジンで最新の排ガス規制をクリアすべく技術開発を進めていることを紹介したほか、カーボンニュートラル燃料の可能性についても言及し、「もしも全乗用車の燃料にカーボンニュートラル燃料を10%混合すれば、650万台がカーボンフリーになったのと同じ効果が得られる」と指摘したのである。
現状、カーボンニュートラル燃料は1リッターあたり数百円から数千円するといわれており、実用化にはほど遠い状況。いっぽうでEVの普及もなかなか進まないなか、カーボンニュートラル燃料の10%混合は価格的にも受容できる可能性が高く、その効果も極めて大きい。検討に値する提案だと思う。
いっぽうでマツダはスポーツモデルやモータースポーツ活動に関する発表も行ったが、他社の場合はこちらが主流で、ホンダは人気が集中して納期が延び延びになっているシビック・タイプRの新しい仕様を発表したほか、フォルクスワーゲンは新型ゴルフRや新型ゴルフGTIなどをリリース。ブランドのスポーツイメージを強調した。
例年、豊田章男会長の登壇で多くの注目を集めるトヨタ自動車は、今年も豊田会長がスピーチを行うはずだったが、直前にラスヴェガスで開催されたCESに出席した「疲れがたまった(一説にはインフルエンザとも)」とのことで急遽、欠席となったものの、モータースポーツ活動などに絞った発表内容はなかなか派手で、新型高出力エンジンを発表したり、ミドシップに改造したGRヤリスでモータースポーツ活動を行うことを示唆した。
個人的にもうひとつ興味を抱いたのが韓国のヒョンデ。彼らは昨年、ドリフト走行が簡単にできるEV“アイオニック5 N”を発売したが、今回はその特別仕様車を2台立て続けに発表。うち1台は“ドリフトキング”の異名を取る土屋圭市氏との共同開発で、その名を「アイオニック5 N DKエディション」という。
こちらは外観だけでなくブレーキを強化するなど本格的な内容で、「ドリフトできるEV」のプロモーションとしては、かなり大胆な手法といえる。
そのほかにも、人気の旧車“トヨタAE86”のレストアプログラムをトヨタと縁が深いトムスが発表したことも、個人的にAE86を所有する私には興味深いニュース。ただし、その価格がエンジン単体で258万5000円と聞いて心が折れそうになった。
オートサロンは1月12日まで幕張メッセで開催される。