著者は本当に紫式部なのか??
『源氏物語』は五十四巻、94万3135字にもおよび「倉本一宏『増補版 藤原道長の権力と欲望 紫式部の時代』)、登場人物の数も400人を超える。
超大作ゆえに、作者複数説も根強く、第三部の「宇治十帖」は、紫式部の娘・大弐三位が書いたとも、「匂宮」、「紅梅」、「竹河」の三帖も作者が違うともいわれる。
だが、瀬戸内寂聴氏は作者複数説に関して、「『源氏物語』ほどの壮大な傑作を、一人の女性だけで書けるはずがない」という想像と仮説である。紫式部一人の作と断定する証拠もないが、複数説を裏付ける確たる証拠も、今に至るまで出ていないと断じている(瀬戸内寂聴『源氏物語 巻一』)。
『源氏物語』は、紫式部一人の手によって描かれたのか、否なのか。
そんな謎もまた、『源氏物語』の魅力の一つなのではないだろうか。