原因はフォルクスワーゲンの世界戦略EV『ID.4』だった!

 帰宅し、3日後の月曜日に出直した時にも空気圧は2.0に下がっただけでした。すべてがクリアになると気持ちに余裕も出てきて、どこでネジと金属片を拾ったかの記憶を遡るようになりました。

 それについては、思い当たるフシがあったのです。スローパンクチュアが判明した金曜日の2日前の水曜日に出掛けていた、フォルクスワーゲンの「Tech Day」というメディアイベントの帰り道です。

 栃木県のGKN社のテストコースで、フォルクスワーゲンが昨年から日本に導入したEV(電気自動車)「ID.4」の走行特性をテストコースで体験するイベントでした。ID.4はリアにモーターを搭載し後輪を駆動します(前後に2基のモーターを搭載した4輪駆動版もあります)。

フォルクスワーゲン ID.4

 これまでの「ゴルフ」に代表されるフォルクスワーゲンのエンジン車はフロントにエンジンを搭載し前輪を駆動していたので、運転した感覚が全然違うということをフォルクスワーゲンは伝えたかったのです。

 ID.4の前輪とフロントサスペンションは駆動と重量物を負担する役目から解放されているので柔らかく、上下によく動きます。舵も良く効き、荷重の変化もわかりやすい。ゴルフ一派のエンジン車が、つねに前輪に駆動力が伝えられるのでガチガチに固められ、ピリピリと緊張しっ放しだったのとは正反対です。ID.4は穏やかで、優しい。ゴルフのように前輪が路面に対して“突っ張って”いないので、凹凸やカーブを受け入れながら、加速はもっぱら後輪が担っています。道と調和しながら進んでいく印象を受けました。

 ID.4には今年2月に乗っていて、理屈では理解していたつもりでしたが、改めてテストコースで乗ってみると、両者の違いが如実に感じられました。革命級の変化です。

 きっと、50年近く前に空冷後輪駆動のビートルから水冷エンジンによる前輪駆動のゴルフに入れ替わろうとした時の、フォルクスワーゲンのパワートレインのフォーマットの一大転換の衝撃は、こんな感じだったのではと想像できました。

 ID.4に強く印象付けられながら、テストコースの駐車場を出て、敷地内から外へ出ようとゆっくりと走っていた時に、リアタイヤがプチンッと何かを踏み付けて、それがその場で潰れたように感じたのです。その時は、“潰れたのだから、木の枝とか、プラスチックか何かだろう”と思っていました。

 踏んだのがネジだったとするならば、プチンッという手応えというか尻応えは、ネジがトレッド面のゴムに喰い込んだ感触そのものです。一般道と東北自動車道を走っている間に徐々にトレッド面に喰い込んでいきながらも、ネジはアスファルトに削り取られていってしまいました。“蜂のひと刺し”ではありませんが、ネジは自分を踏み付けたタイヤをパンクさせながら、自らを削らさせていたのです。僕に踏まれなければ、路傍で誰にも顧みられずに錆び朽ちていくか、掃除されてゴミ箱に捨てられるかしていたことでしょう。

 2度目のパンクだったので気持ちに余裕が生じていたからなのか、あるいはタイヤ館の副店長氏の応対ぶりが的確だったからなのか、悔しい想いはあまり抱かずに済んでいます。

 ちなみに、イーグルF1の履き心地ですが、とても上々です。スポーツカーにとって大切な路面状況と操縦のインフォメーションもステアリングを通じて良く感じられます。また、快適性も上々で、ショックや突き上げなどもうまく吸収してくれています。ただ、そうした好印象はフレッシュなタイヤだからなのか、あるいはイーグルF1だからなのかまでは特定できません。パンクしたピレリ・Pゼロロッソも新品の時にはこんな感じに近かったようにも思い出せるからです。いずれにしても、新しいタイヤというのは気持ちの良いものですね。