なぜ、こんな姿に!?

結局、なぜ、空気は抜けたのか?

 タイヤ館では、出発前に電話を入れておいた、さきほどの副店長氏が待ってくれていました。彼に718ボクスターを渡し、待合室へと促され、タイヤの状態のインスペクションの報告を待ちます。こういう時に、街のタイヤショップなどでしたら、作業風景を見ながら、リアルタイムでインスペクションできたりもしますが、ここは現代流に安全確保の観点からも作業スペースと顧客スペースが峻別されているので、大人しく待つばかりです。小一時間して、副店長氏がやってきました。

「判明しました。左リアタイヤにネジが刺さっていて、それが貫通していたので、そこから空気が漏れていました。ネジの他にもうひとつ金属片も拾っていて、そこからも漏れていました。ネジは抜いて埋められますが、金属片の跡は埋めても漏れてきてしまうでしょう。ですので、交換をお勧めいたします。こちらです」

 副店長氏は、そう言って左リアタイヤを見せてくれた。

 刺さったネジが削れてトレッド面と面一(ツライチ)につながっている。ということは、刺さってから、ある程度の距離を走り続けたから、ゴムに埋め込まれながらアスファルト路面で削れてしまったのでしょう。

 どこかでネジと金属片を拾い、その瞬間からなのか、その後からなのか、少しづつ空気が漏れてしまっていたのです。スローパンクチュアですね。

718ボクスターのタイヤ事情

「ポルシェですと、“Nタイヤ”ですね」

 ただサイズが合っていれば良いというだけではなく、ポルシェ社が認証したメーカーの特定モデルのタイヤでなければならない。そうでないタイヤを履いてトラブルが起きても、補償を受けられないということになっているのです。

 とは言っても、そうそう選択肢があるわけでもなく、結果的にNタイヤを選ぶことになってしまうのは、前回のタイヤ交換時に体験しています。僕の718ボクスターの標準サイズは18インチで、オプションで19インチが設定されています。718ボクスターSの標準が19インチで、オプションが20インチ。

 タイヤもニューモデルが生まれ、マイナーチェンジも行われますから、いつまでも自分のクルマのサイズが売られているとは限らず、毎回、タイヤの選択肢が少なくなっていくことは以前に乗っていた初代ボクスターで経験していました。

 副店長氏はカウンターのパソコンの前に座り、Nタイヤの在庫を調べていました。

「ブリヂストンではないですね」

 タイヤ館はブリヂストンが経営しているチェーン店であることは知っていたから、ポテンザやレグノを装着することも楽しみだなとは待合室で想像していました。それが無いというのも意外でしたが、前後のサイズも違うので、毎回、倉庫なり海外から取り寄せになっていました。

 パンクしたのは左リアだけでしたが、副店長氏からの報告を聞いて、4本全部交換することにしました。走行5万6000kmを超えていて、そろそろ2セット目もタイヤ交換の時期だなとはパンク以前から考えていたからです。毎回、タイヤの手配に時間と若干の手間を要しているので、この際、ここで確保できるものがあったら、もうそれで決めてしまおうというつもりになっていました。

「グッドイヤーなら週末に確保して、月曜日にお付けできます」

 グッドイヤーの「イーグルF1」というタイヤならばNタイヤ指定されていて、3日後には交換できるそうです。グッドイヤーは他のクルマに乗っていた時も履いたことはありませんでしたが履いてみることにしました。ポルシェが認定しているのだから間違いないでしょうし、業販で確保できるというのだから、それに乗らない手もありません。金額は4本で20万円プラス工賃1万円という消費税込み価格です。安くはありませんが、他に選択肢もありません。