バンフ、ジャスパー、クートニーそれぞれの景観
カナディアン・ロッキーの表玄関といえるのがアルバータ州のバンフ国立公園です。年間400万人もの観光客が訪れる人気の公園の歴史は、大陸横断鉄道の建設計画に始まります。
1881年、誕生して間もないカナダ連邦政府は、国家建設の要ともいえる大陸横断鉄道の建設に着手しますが、最大の難所だったのがそそり立つ岩山に鉄道の線路を敷かなければならないという、カナディアン・ロッキー越えでした。すると偶然にもルート探索中の1883年、バンフにあるサルファー山の洞窟内で温泉が発見されます。サルファーとは英語で硫黄のことです。このことによってバンフは1887年にカナダ国内で初めての国立公園となり、今では温泉と鉄道によって世界有数のリゾートとなったのでした。
バンフ国立公園のいちばんの見どころは、多くの氷河湖が点在するなかでも、随一の美しさを誇っている「レイクルイーズ」です。先住民たちに「小さな魚たちの湖」と呼ばれていた湖は、1882年、先住民ではない人に発見され、「エメラルド湖 」と呼ばれました。その2年後にはヴィクトリア女王の娘であり、カナダ総督ローン侯爵の妻でもあるルイーズ王女にちなんで改名されたというエピソードがあります。
1907年に国立公園に指定され、1万878㎢という東京都の約5倍の面積なのが、アルバータ州のジャスパー国立公園です。ここでの絶景はなんといっても、コロンビア山の周辺一帯に広がる「コロンビア大氷原」でしょう。
総面積325㎢、厚さ300m以上にも達するロッキー山脈最大の氷原で、ここから流れ出す川は、北は北極海、西は太平洋、東は大西洋へと注いでいます。氷原は氷河の起点となり、氷河湖も形成しています。野生の動植物にとっての楽園となっていて、エルクやムースという大型の鹿や、シロイワヤギ、ビッグホーン・ シープ、グリズリーハイイログマ、オオカミなどが生息しています。
1920年に国立公園となったのが、ブリティッシュコロンビア州のクートニー国立公園です。現在でも鉄道が通じていないので、交通手段は車だけ。氷河の融解水が造り出す滝や渓谷が点在し、水の力による荒々しい造形もあります。
長さ約600mの「マーブルキャニオン」では、水流の力で研磨されて大理石のようになった谷が続き、80m下の谷底を激流が流れるという、壮大な景色が望めます。「ペイント・ポット」と呼ばれる氷河湖の粘土が鉄分を多く含んだ鉱水によって赤く染まり、泉となっている珍しい光景にも出合うことができます。
また、公園ゲートそばには40℃以上の湯が湧き上がるラジウム温泉があり、カナダ最大の温泉プールになっているので、旅の疲れを癒すのもいいでしょう。
4つの国立公園以外にブリティッシュコロンビア州のマウント・アシニボイン、マウント・ロブソン、ハンバーという3つの州立公園も世界遺産に追加登録されています。
とくに注目したいのがマウント・アシニボイン州立公園にある標高3618mのアシニボイン山。天を突き刺すような鋭角的な頂から「カナディアン・ロッキーのマッターホルン」と呼ばれています。また、マウント・ロブソン州立公園には1913年まで登頂に成功した者がいなかったという、カナディアン・ロッキーの最高峰「カナディアン・ロッキーの巨人」と呼ばれる標高3954mのロブソン山があります。神秘的な山々を眺めるだけでも貴重な体験となるでしょう。