役割の違いはあるが、人も国もフェア

 このように壮大なインスタレーションやアクティビティを展開するHANAZONOリゾートに建つホテル、パーク ハイアット ニセコ HANAZONOのスケールもまた、けた違いに大きい。

雄大な自然景観にコンテンポラリーデザインが調和する、北海道初の「ラグジュアリー」(最高級)カテゴリーのホテル

 客室数は、スイート28室を含む全100室だが、すべての客室が65平方m以上である。床から天井まで広がる大きな窓から自然光が差し込み、羊蹄山を含むニセコのドラマティックな自然の一部になったような解放感を与えてくれる。

天井が驚くほど高い。2015年に香港の不動産会社パシフィック・センチュリー・プレミアム・ディベロップメントが建設。ハイアット ホテル アンド リゾーツとホテル・レジデンスの運営受託契約を締結している

 各客室には広いリビングとダイニングスペースまであり、ウォークインクローゼット、バスタブつきのバスルームのほかに、スタンダードレベルでも、セカンドバスルームまで備わる。都心のホテルであればふつうにスイート扱いというレベルである。

アートがあちこちに飾られ、美術館のような雰囲気。レジデンス購入者は所有物件をパーク ハイアットに委託することで宿泊施設として貸し出すこともでき、コンドミニアムとしての利用が可能になっている

 ホテル棟に隣接するレジデンス棟には、スタジオタイプからペントハウスまで、多彩なレジデンスの客室が60室。リゾートシーズンだけの滞在も多い。

開業に先立つ2019年、G20サミットの国際会合「観光大臣会合」を開催している

 館内にはミシュラン星付きシェフによるフランス料理と寿司を含む、10の多彩なレストラン、ラウンジ、バーがあり、さらに多種多様なプライベートダイニングルームまで備わっているので、長期滞在でもグルメジャーニーが楽しめるようになっている。

スパにはトリートメントルームが6室完備され、そのうちの2室は温泉付きカップルルームになっている。プラベート感が守られた部屋からはこのような「緑と水」の癒しの景色を眺めることもできる

 ウェルネスも充実する。サウナを備えた温泉大浴場や25mのインドアプール、最新鋭のマシンを完備したフィットネスセンターもあれば、多彩なトリートメントを用意するスパもある。ウィンターシーズンには、スキーイン・スキーアウトが可能。スキーバレーが細やかにサービスを提供してくれるので何のストレスもないスキー体験ができる。「ないものはない」くらい充実したサービスを、高いクオリティで提供するホテルである。

広く開放的なラウンジ。ホテルはピエール・エルメと提携しており、エルメのアフタヌーン・ティーも提供されている。朝食ブッフェにはエルメのパンやスイーツも並ぶ

 デザインはオーストラリアのBAR Studio。2020年1月に開業して以来、上質な施設やサービスが評価され、「トリップアドバイザー トラベラーズチョイス2021」「同 トラベラーズチョイス ベストオブベスト2022」、「ホテル・トラベル・アワード2022」ほか数々の賞を受賞している。

 規模が大きいのにホテル内移動がラクにできているというハード面もさることながら、最大の魅力と映るのは、30か国から集まっているスタッフのホスピタリティである。

 ニセコの町全体がそうだが、インターナショナルな空気があり、ホテル内ではほぼ英語で会話が交わされる。もちろん日本語も大丈夫なので、話しやすい言語を使って自在なコミュニケーションができる。スタッフはマニュアル的な行動はとらず、それぞれが自分の判断で接客しているようにふるまい、それが風通しのいい雰囲気を醸成している。

 客とスタッフの間の節度は保ち、役割はきちんと果たすが、「人と人」としてはフェアに接し、国籍間の格差もない。そんな包摂性のある空気には、次世代が好む「新型」ラグジュアリーの気配も感じる。