構成・文=長谷川剛(TRS)スタイリング=石川英治(TABLEROCK)写真=大泉綾平
フレンチ特有のスマートな色気が今の気分
正統派のメンズスタイルを洒脱に仕上げようと考えるなら、まず足下にこだわるべき。昨今は昔ほどデコラティブなコーディネイトにスポットが当たらなくなりました。なんとなればタイドアップすらもトゥマッチに見られる場合があるくらい。ですからスーツも芯地やパッドをできるだけ取り去った、ライトな一着に人気がシフトしています。しかし定番的かつ軽い装いを作り上げるなかで、自分らしい個性をいかに演出すべきなのか? 答えは簡単、足下の靴にこだわることで手軽に解決できるのです。
そこで問題となるのがその靴自体のセレクション。星の数ほどあるブランドのなかから一体どんなモデルを選ぶべきか。トラッドで真面目なスタイルを貫くなら英国靴でも良いでしょう。しかし現代的かつ遊び心ある軽快なスタイルを狙うのであれば、ぜひフランス製シューズをチョイスしていただきたいのです。フレンチらしいスラッと伸びたロングトゥモデルは、脚さばきを華麗に見せ、英国でもイタリアでもない玄妙な色使いは、普遍的、かつ、どこかほんのりとした色気を装いに添えてくれるもの。なかでも当世随一と謳われる一足がコルテのシューズなのです。
「コルテ」は、文字通り靴職人ピエール・コルテがつくり出す上質な一足が魅力のブランドです。彼は16歳から伝統靴職人養成ギルドに入り、修業を積んだ生粋の靴職人。ジョン ロブやベルルッティなどの名門にてビスポーク職人として腕を揮い、1990年にフランスはパリにて高級オーダーメイド専門の靴ブランドを立ち上げています。
パリにはそれまでにもオーベルシーやJ.M.ウェストンといった有力な先達ブランドが活躍していました。しかしコルテの靴は職人的なクオリティに加え、先進的なデザイン性をも備えていることから多くのファンを獲得し、瞬く間に著名ブランドへと成長しました。2008年にはフランス文化省より人間国宝に指定されるほどの実力派となったピエール・コルテ。
なかでも世界の靴マニアから絶賛されるモデルが、同ブランドのシグネチャーとも言える「コルテ-アルカ」です。若き時代、南仏の海にて過ごしたピエールの記憶に強く焼き付いた、祖父所有のヨットに由来するモデルと言います。
その流れるようなアッパーと、履く人の足をより強調したいとトゥ回りにアレンジを加えた2アイレット・デザインは、スマートにしてグラマラス。熟練技にて塗り込まれた美麗なグラーデーションを放つカラーと相まって、足下に洒脱な色気を纏わせる仕上りが特徴です。
「コルテ」のドレスシューズは非常に高貴でオーセンティックなスペックを持ちながら、カジュアルな装いにもマッチするところが大きな魅力。たとえばこの「コルテ・アルカ」は、シックなスーツやジャケット&パンツの着こなしはもちろん、洗いざらしのジーンズなどに合わせても非常に軽妙に決まるもの。
服装自体はオーセンティックに徹しつつ、何か一点新調することでルックス全体をグレードアップさせてみたい。そう考える人は、ぜひこのコルテのシューズから試してみることをお奨めいたします。