人の感情に訴えるエクスペリエンス主導型DX

 では現在、企業に求められているのはどのような変化=トランスフォーメーションでしょうか。私たちがサービスとして提供しているトランスフォーメーションには、大きく下の3種類があります。

①プロセス主導型トランスフォーメーション
ノンコア業務をデジタル視点でデザインし直し、自動化して人のオペレーションを最小化する。

②データ主導型トランスフォーメーション
これまでコア業務として行っていたものを、AIやアナリティクスを駆使してノンコア業務に変え、自動化することで効率化を図る。

③エクスペリエンス主導型トランスフォーメーション
エクスペリエンスを起点にして、デジタルテクノロジーを活用し、ビジネス自体のあり方を変革していく。まさにDX=デジタルトランスフォーメーション。

 この中で、現在強く求められているのが、エクスペリエンス主導型トランスフォーメーションです。この「エクスペリエンス(経験)主導型」とは、お客さまや従業員にとってより良い経験を提供し、それを起点に変革を進めるという意味です。

 言い換えれば、お客さまや従業員が求めている(期待値)以上の経験=価値を明確にデザインし、その実現のツールとしてデジタルを活用し、変革を加速していくのです。

 変化の激しい時代にあって、「エクスペリエンス主導型」がひときわ重要とされる理由は、それが人の感情に直接働きかける強さを持っているからです。

 かつてマーティン・ルーサー・キング牧師とともに公民権運動に参加し、詩人や歌手や女優としても活躍したアメリカのマヤ・アンジェロウ氏は、「人は皆、あなたが言ったことを忘れてしまう。あなたがしたことを忘れてしまう。だけど、あなたに対して抱いた感情を忘れることはないでしょう」という言葉を残しています。

 この箴言をDXに当てはめてみれば、お客さまや従業員はその会社の表面的な振る舞いや言葉はすぐに忘れてしまうが、自分からその会社に対して抱いた思いや感情はずっと続いていく。

 つまり、耳に心地よい宣伝文句や派手なキャンペーンに力を入れるよりも、「この会社はいいものを提供してくれる」、「このブランドは好きだ」といった気持ちを感じてもらう経験=エクスペリエンスほど強いものはないということです。