本コンテンツは、2020年8月31日に開催されたJBpress主催「Digital Innovation Forum 2020 <夏>~デジタル変革によるイノベーションの実現~」での講演内容を採録したものです。

ジェンパクト株式会社 代表取締役社長 グローバルシニアバイスプレジデント
一般社団法人 日本RPA協会 専務理事
一般社団法人 経営情報学会 副会長
田中 淳一 氏

コロナ危機はDX推進のまたとないチャンス

 ジェンパクトは、トランスフォーメーションサービスプロバイダーであり、DX推進を提供している会社です。私たちはスローガンとして「働く」を変える会社をうたっています。

 これは「デジタルを使い、世界中の人の単純に事務作業をなくす」、「そこから生まれた時間を考えることに使い、さらに付加価値創出を促す」ということを意味しています。

 現在はコロナ禍によって、実にいろいろな変化や逆境がもたらされてきています。この間の成長率はマイナス27.8%と、経済は破壊的な状況に晒されています。しかしこれは裏返せば既存の構造が壊れることであり、人々がDXと呼んで求めてきた変革は、何かが壊れた後にしか訪れない。

 誤解を恐れずに言えば、今回のコロナによる危機は、新たな仕組みを作り出す千載一遇の機会と捉えるべきではないでしょうか。

 こうした危機にあって、特にビジネスサービス部門ではさまざまな変化が加速しています。たとえば在宅勤務の拡がりで、働き方はオフラインからオンラインに重点が移っています。そうなれば、オンラインにおける働き方の定義を改めて見直さないといけません。

 もちろん、より充実したテレワークの環境構築も必要です。それにも増して、これからはジョブディスクリプション=誰が何をすべきかをはっきりとさせていかないと、本来の意味でのリモート化は進んでいきません。

 またリモート化が進むと、当然多くのことがデータ化されていきます。その結果、さまざまな領域で自動化が加速し、業務の進め方も変化していけば、働く人に要求される役割も変わります。

 自動化で単純作業が減れば、その時間を使って新しい役割や付加価値を生むことが求められ、オペレーティングモデルや役割もますます高度化していきます。

 今回の変化を契機に、これまで実現したくてもできなかった変革に取り組む企業が急速に増えています。たとえばワークスタイルの多様化です。従来のオンショア/オフショア/ニアショアに加えて、ホームショア=家でも職場と同様に作業ができるようにする。

 あるいは、業務を自動化する部分と人間が手がける部分の見直しを行う。またアナリティクスやAI導入によって単純業務の自動化が進み、これまで以上に多くの機能やプロセスをサービス部門から提供する。このようなトランスフォーメーションを、積極的に推進する企業がさまざまな業種・分野で現れてきています。

人の感情に訴えるエクスペリエンス主導型DX

 では現在、企業に求められているのはどのような変化=トランスフォーメーションでしょうか。私たちがサービスとして提供しているトランスフォーメーションには、大きく下の3種類があります。

①プロセス主導型トランスフォーメーション
ノンコア業務をデジタル視点でデザインし直し、自動化して人のオペレーションを最小化する。

②データ主導型トランスフォーメーション
これまでコア業務として行っていたものを、AIやアナリティクスを駆使してノンコア業務に変え、自動化することで効率化を図る。

③エクスペリエンス主導型トランスフォーメーション
エクスペリエンスを起点にして、デジタルテクノロジーを活用し、ビジネス自体のあり方を変革していく。まさにDX=デジタルトランスフォーメーション。

 この中で、現在強く求められているのが、エクスペリエンス主導型トランスフォーメーションです。この「エクスペリエンス(経験)主導型」とは、お客さまや従業員にとってより良い経験を提供し、それを起点に変革を進めるという意味です。

 言い換えれば、お客さまや従業員が求めている(期待値)以上の経験=価値を明確にデザインし、その実現のツールとしてデジタルを活用し、変革を加速していくのです。

 変化の激しい時代にあって、「エクスペリエンス主導型」がひときわ重要とされる理由は、それが人の感情に直接働きかける強さを持っているからです。

 かつてマーティン・ルーサー・キング牧師とともに公民権運動に参加し、詩人や歌手や女優としても活躍したアメリカのマヤ・アンジェロウ氏は、「人は皆、あなたが言ったことを忘れてしまう。あなたがしたことを忘れてしまう。だけど、あなたに対して抱いた感情を忘れることはないでしょう」という言葉を残しています。

 この箴言をDXに当てはめてみれば、お客さまや従業員はその会社の表面的な振る舞いや言葉はすぐに忘れてしまうが、自分からその会社に対して抱いた思いや感情はずっと続いていく。

 つまり、耳に心地よい宣伝文句や派手なキャンペーンに力を入れるよりも、「この会社はいいものを提供してくれる」、「このブランドは好きだ」といった気持ちを感じてもらう経験=エクスペリエンスほど強いものはないということです。

導入企業の中では売上高33%アップの成果も

 エクスペリエンス主導型トランスフォーメーションの具体例として、私たちがこれまでサービスを提供してきたお客さまの中から、代表的な事例をひとつご紹介しましょう。

 大手小売業 A社:バリューチェーンの刷新で自社の存在感も売上げも大幅アップ

 この企業では、「顧客にとってなくてはならない存在」を目指し、顧客起点による企業バリューチェーンの見直しを行いました。目標を「顧客の生活に溶け込み、ときに驚きを与える“なくてはならない存在”」と決め、お客さまの顕在化ニーズを当たり前に満たし、潜在ニーズに気づかせてくれる企業になろうと考えたのです。

 この実現に向けた施策としては、顧客戦略やチャネル戦略、オペレーション変革などを総合的に実行していきました。ここで重要なのは、どのような施策を行う場合も、最初に目標を明確に決め、そこに向けてデジタル活用も含め何を行うべきかをデザインしていったことです。

 たとえば「お店に来ていただくには?」、「来ていただいた後をどうするか?」といった問いを立て、そこから実際の施策や必要なツールなどを導き出していきました。

 一般にDXというと、デジタルでできること=RPAやAI、機械学習といった「テクノロジーありき」の考え方で進めてしまいがちです。しかし目標を定めずにツールばかりをそろえても成果は期待できません。

 そこで同社では、マーケティングオートメーションツールを導入する際にも、「そもそもお客さまを呼ぶために何をすべきか?」をきちんと議論した上で、具体的なソリューション選定などを進めていきました。

 この結果、売上高は33%のアップ。また顧客数は18%、顧客単価は13%、購買率は2.8%アップと大きな成果を挙げることができたのです。「お客さまによりよいエクスペリエンスを提供するには何をすべきで、その実現にはどんなことが必要か?」を積み上げて目標に達する、まさにエクスペリエンス主導型トランスフォーメーションの好事例といえます。

 コロナ禍を契機としたさまざまな変革は、この先も急速に進んでいくことが確実です。これを自社のDX推進の好機と捉え、タイミングを逃さず改革を進めていくことが必要です。

 その変革のモデルには今回ご紹介した3つがありますが、可能であればまずはエクスペリエンス主導型トランスフォーメーションに挑戦していただきたいと思います。もし現状では難しければ、残りの2つから始めるだけでも十分に価値があります。

 当社では、今回ご紹介した他にも、お客さまのご要望に即したさまざまなサービスや、多彩な導入事例をご用意しています。自社でのDX推進に関心をお持ちの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。

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