【4】アーティゾン美術館
コレクションを見せながら企画展を行う私立美術館をもう1つ挙げましょう。ブリヂストン美術館から改称し、2020年1月にリニューアルオープンしたアーティゾン美術館(東京都中央区京橋、公益財団法人石橋財団が運営)です。
ビルの建て替えに伴ってリニューアルしたことで、ブリヂストン美術館のときよりも展示スペースが圧倒的に増えました。
コレクションは、ブリヂストンの創業者である実業家、石橋正二郎の収集した美術品がベースです。基本はフランス印象派を中心に集めたコレクションなんですが、非常に充実しています。
これまではコレクションをどう見せるかいろいろ苦しんでいたようですが、リニューアルして、3フロアのうちのワンフロアを丸ごとコレクションを見せる展示スペースにしました。それだけでサントリー美術館分ぐらいの広さがあります。アーティゾン美術館はリニューアルしたことで本当に美術館らしくなりましたね。10月25日までの「鴻池朋子」展は「ジャム・セッション」と銘打って、現代美術作家のインスタレーションをこの館の所蔵品と組み合わせている。僕にとって、サントリーとアーティゾンの2館は、いつも心躍る私立美術館です。
【5】東京都現代美術館
5つ目は、東京都現代美術館(東京都江東区三好)です。東京都現代美術館も立派なコレクションがあり、常設展示しています。戦後美術を体系的に収集しており、若手の作品も積極的に収集しています。戦後美術だと国立近代美術館の次ぐらいのコレクションがあるのではないでしょうか。
今、デンマークのアーティスト、オラファー・エリアソンの大規模個展「ときに川は橋となる」(9月27日まで)を開催していますが、この展覧会も意欲的ですごく面白い。交通の便が悪くちょっと不便な場所なんですが、ぜひ訪れてみてほしいと思います。
「イベント」ではなく「ミュージアム」に行ってほしい
以上、国立2つ、私立2つ、都立を1つ挙げました。足を運んでみてほしいのは、基本はやはりちゃんとしたコレクションがあるところです。5館とも東京になりましたが、美術系の国立博物館は東京以外に京都、奈良、福岡にもありますので、そちらも行ってみるといいと思います。とにかく施設が大きくて、膨大なコレクションを展示しています。
日本では美術館と博物館が分かれていますが、英語やラテン語のミュージアムは美術館も博物館も指します。人間の文化芸術の歴史をすべて見せるのがミュージアムなんです。
私としては、「イベント」に行くのではなく「ミュージアム」に行ってほしいという思いがあります。マスコミが大々的に宣伝して話題になっている展覧会だけを見に行っていたらもったいない。美術館というのは、皆さんが考えている以上に実は奥が深くて、面白い場所なんだということを、もっと多くの人に知ってほしいですね。