平成が終わり令和の時代が始まった。この新しい時代に印刷業界では新たな印刷会社のあり方を追求する企業が増えてきている。変革に挑む印刷会社は何を考え何が課題になっているのか。
それを乗り越えるためにどんな人材が求められているのか。印刷会社の未来を切り開こうと挑戦を続ける3社の経営幹部に人材に焦点をあて話を聞いた。
人材不足が変革の大きな壁になっている
――新しい時代に向かう印刷会社として人材面ではどんな課題があるのでしょうか。
小松氏 今、印刷業界は変化に向けて過渡期を迎えています。そこで問題になるのは人材不足です。私たちが取り組もうとしていることは、これまでの延長線上にはない新しいことです。これまでの人材では対応できません。しかし、新人を育てるには時間がかかります。やるべきことがわかっていても、実行までは時間がかかりすぎてしまういというジレンマを日々感じています。
大洞氏 印刷物を作るという面では人材は不足していないのですが、新しいチャレンジをする時に、全体を統括できるようなクリエイティブな人材がとても少ない。特に地方では深刻です。クリエイティブな仕事をしたいと考える人は東京や大阪などの都市部に出て行ってしまいますから、人材がなかなか採用できません。
もう一つ教育という面でも課題が山積みです。当社のような中小企業には専門の部署をなかなかつくりにくい。現在は試行錯誤しながら教育プログラムを体系化しているところです。
林氏 入社してくれる方との現実とのイメージのギャップの大きさも問題です。今、印刷会社は大きく変わっていなければならない局面にいますが、印刷をやりたい人が来るわけです。印刷のニーズは少なくなり付帯サービスが中心になっていくこれからを想定するとどうしてもギャップが生じてしまいます。
大洞氏 確かに本が好きという人が応募してくれるケースは多いですね。
林氏 だからどうしても足りないピースは中途採用で補うようになります。でも企業としては新人を育てることも大切です。その意味では印刷会社の再定義も必要なのかも知れません。
小松氏 新卒の採用自体が難しくなっています。変革期でもあるし、中途採用も積極的に考えながら新卒とのバランスをとっていかなければなりませんね。
大洞氏 当社では4年前に一括採用はやめて、新卒採用も中途採用も通年採用に切り替えました。
――男女比率という点では変化はあるのでしょうか。
大洞氏 当社の従業員数はちょうど100名ですが、51名が女性です。女性が増えて半分を超えました。新卒採用の8割が女性で占められたこともあり、入ってくる人が増えたこともありますが、テレワークや時短など働きやすい環境を整備してきた効果で、辞める人が減ったことも大きな要因です。78歳になっても働いてくれている女性もいます。