スポーツモードでさらに生き生き

路上では快適な乗り心地と高速安定性を提供する。これぞグラントゥリズモ。

 富津岬での撮影終了後、帰路に着く。雨が止んでドライ路面になってきたので、マネッティーノのダイヤルをスポーツにしてみる。エンジンのサウンドがさらに生き生きとして、全体の動きがシャープになる。料金所が近づいたのでブレーキを踏むと、ブオンブオンッとV12が自動的に吠えながらギアを落とす。

 ゲートを通過してアクセル・ペダルを深々と踏み込むと、12本のシリンダーが歌い始める。アクセルを踏む量と速度によって、その歌声はさながらオペラの楽曲のようにドラマチックに変化する。基本的には男性的なバリトンで、3000rpmから歌声はボリュームを増し、6000rpmを超えると高音が加わる。フェラーリの8気筒もいい音だけれど、12気筒ともなると、いっそう濃密で、音に厚みがある。そりゃそうである。バリトンのオペラ歌手が12人もいるのだ。

 でもって、12人による大合唱が9000rpmまで続く。9000rpm。スピード違反でまずいです。でも、排気量6496cc、ひとり540ccちょっとの肺活量を持つ、バリトンたちによる大合唱が聴きたい。右足をフロアまで踏みつけると、12本のシリンダーが超速でピストン運動し、7速デュアル・クラッチ・トランスミッションが電光石火で3速から4速へとシフトアップ。同時にオクターブがちょっと上がって、もうどうなっちゃってもいいや、と一瞬思う。加速とサウンドのコンビネーションでもって、フェラーリはドライバーをここではない桃源郷へと誘う。

 フェラーリ812スーパーファスト、サイコーだぜ!

ボディ各所のエアダクトにより高速時の空気の流れをコントロールして強力なダウンフォースを発生させる。
未来感覚漂うインテリア。変速はステアリングの根元に設けられたパドルで行うこともできる。
ホイールの内側を目一杯使うブレーキのキャリパーとディスク。タイヤは前275/35ZR20、後ろ315/35ZR20