マスメディアの情報よりも
口コミを信頼する人が多い

 皆さんの会社の経営理念・社是に、「顧客満足」というキーワードはありますか? セミナーなどで尋ねると、8割、9割の方が、それに近いようなワードが入っていると答えます。ただ、そのCS(顧客満足)が収益に結びついているところは少ないようです。

 スターバックス社の調査によれば、顧客満足度が上がるとCLV(顧客生涯価値)も上がることがわかりました。CSの収益化パターンとしては「単価」「頻度」「関係性の長期化」の向上(既存客の維持)、さらに「紹介・口コミ」の増加(新規客の創造)などへとつながります。

 今日は特にCRV(紹介・口コミ)にどう取り組んでいけばいいかという話をしたいと思います。最近になって、口コミによって顧客の獲得を図るバイラルマーケティングが急速に発展しています。背景にはSNSのユーザーが急増していることが挙げられます。受信者だけでなく発信者も増えています。つまり個人のメディア化です。一般消費者が信頼する情報源として、4マスメディア(新聞、雑誌、ラジオ、テレビ)よりも知人の推薦やインターネット上の口コミの方が割合が高くなっています。

 当社の調査によれば、個人の消費者だけでなく、法人の担当者も、商品情報を獲得する情報源として社内外の紹介・口コミを利用するという人が約半数になっています。

 新規事業をやっていくときに、「魔の川」や「死の谷」、「ダーウィンの海」を越えていかなければならないと言いますが、ここでも、バイラルマーケティングが非常に重要です。マーケティング用語で言えば、最初はイノベーターが入ってきて、その後、アーリーアダプターが次に取れます。この人たちがどういう口コミをしてくれるかによって、その後、アーリーマジョリティにつながるかどうかが決まります。そこのキャズム(深い溝)を越えるためにも、口コミをどうやって生かしていくかが非常に重要になります。

紹介・口コミにより新規客を
創造するためのポイント

 では、どうやればCRV最大化(紹介・クチコミによる新規客の創造)の仕組み化ができるでしょうか。

 書店に行けば口コミをテーマにした本がたくさん並んでいます。しかし、その多くは、個人のトップセールスの方が自分のやり方を紹介しているだけのものです。会社としてどうすべきか、組織的な活動について書いた本はほとんどありません。

 そこで当社では組織でどうやって紹介・口コミを生み出していけるかを形としてまとめました。フレームワークとして「4つのS」があります。それは「①Segmentation:セグメンテーション」「②Satisfaction:サティスファクション」「③Sales:セールス」「④System:システム」です。

 Segmentationのポイントは、紹介を強化するために、必要な顧客を選定することです。注意すべきはここで自社にとってCLVの高い人を選んでしまいがちなことです。大切なのは世話焼きだとかお節介といった紹介意向の高い人を探すことです。この他、人脈・ネットワークや影響度も大切になります。

 Satisfactionのポイントは、紹介推奨度に強い影響を与える因子を特定することです。先ほど、顧客満足度が高いと紹介や口コミが増えると話しました。満足度を高めるために、何と相関があるのかを見極め、満足度の向上の方法を考えるとともに、時系列で満足度の高い、熱が上がるタイミングに依頼をするのが効果的です。

 また、Salesのポイントは、紹介営業マインドおよびスキルを強化すること、Systemのポイントは、成果創出パターンを仕組み化し、運用制度を設計することです。