本コンテンツは、2019年12月2日に開催されたJBpress主催「ビジネス・アクセラレーション・フォーラム 2019 組織の生産性を高め、ビジネスの成長を加速せよ!」での講演内容を採録したものです。

株式会社リブ・コンサルティング
常務取締役 CHRO 
権田 和士 氏

日本企業はいまだに
属人的な営業活動が行われている

 まず皆さんにお尋ねしたいと思います。「営業スタッフは必要ですか、それとも不要ですか」

 実際のところ、営業職の減少がすでに始まっています。特にBtoBの営業職や、BtoCでも高級な商材を売っているような営業職はどんどん減っているような状況です。それに対して、営業・販売の事務職が増えています。営業・販売の機能が単純化され、営業事務職や販売事務職といった職種に増加傾向が見られます。

 当社は2017年5月、セールス550人に対して「今後の営業活動についてのアンケート調査」を行いました。「今後の営業活動についてどのように思われますか?」と尋ねたところ、「今後3年以内に、今の営業活動のままでは難しくなると思う」と回答した人が56%で、「分からない」と回答した16%と合計すると、7割以上の人が今後の営業活動について不安視していることが確認できました。

「今の営業活動のままでは難しくなると思う」と回答した人にさらに、「今後、営業活動が難しくなる理由は何ですか?」と尋ねたところ、「顧客のニーズが多様化してきている」「顧客の市場が衰退してきている」「組織的な取り組みや管理ができていない」という回答がトップ3でした。これらの結果は、「生産性が悪化している中で新たな需要を創造しなければならないがいまだに属人的な営業活動が行われている」と解釈することができます。

CLVに加えCRVの最大化に
取り組む企業が成長している

 プロダクトライフサイクルという言葉を聞いたことがあるでしょう。「導入期」「成長期」「成熟期」「新需要創出期」「衰退期」などがありますが、日本企業においては、業界全体が成熟期に入っています。

 成熟期に求められる営業とはどのようなものでしょうか。キーワードは2つ。「CLV(Customer Life Time Value:顧客生涯価値)」と「CRV(Customer Recommend & Referral Value:顧客の紹介・口コミ価値)」です。CLVは、企業と顧客が継続的に取引することによって顧客が企業にもたらす価値のことです。財布シェア、胃袋シェアと呼ばれることもあります。CRVとは、既存顧客の価値だけではなく、紹介をもとにコミュニティにまで広がる価値のことです。ネットワークシェア、口コミシェアなどとも呼ばれます。
 
 従来の顧客戦略では、CLVの最大化(既存顧客の深耕)に主眼が置かれがちでしたが、最近ではそれに加えて、CRVの最大化(新規客の創造)に取り組んでいる企業が伸びています。