9月14日から11月10日まで、長野県の御代田町にて「浅間国際フォトフェスティバル 2019 PHOTO MIYOTA」が開催された。

 PHOTO MIYOTAは、かつて、メルシャン軽井沢美術館があった場所に、アマナが写真美術館をつくることを見据えてスタートさせた写真のフェスティバル。単に建物のなかに写真作品が展示されているだけではなく、屋外に多数の展示があることが特徴。浅間山の麓のかなり広いスペースが舞台になっていることもあって、筆者が訪れた時には地元の子どもたちが、公園で遊ぶように、屋外の作品の間で遊んでいたりもした。

 会期も終盤、このPHOTO MIYOTAにて、「アートが企業と地方にもたらす本当の価値とは」というトークイベントがありautographはその話を聞くべく、御代田を訪れた。

PHOTO MIYOTAの入り口

忘れ得ぬものの姿

 国の重要な建造物が、娯楽の殿堂が、実用に足りさえすれば、豆腐のような姿でよいだろうか。民族が未来永劫忘れまいと誓った場所や人が、利便性のために片隅においやられてよいだろうか。少なくともフランスは否として、街の重要な施設に、当時の大画家の仕事を組み込み、今日なお維持している。たとえば19世紀フランスの画家、ウージェーヌ・ドラクロワの作品は、もちろんルーブル美術館にもあるけれど、リュクサンブール宮殿、パリの市庁舎、サン・シュルピス教会などにもある。

 伊勢丹の社長というイメージが強い、現代日本の洒落者 大西洋は、現在、羽田未来総合研究所なる組織の代表を務め、羽田空港を舞台に「地方創生と文化とアートの発信に取り組んで、日本が誇るものの提案を誰よりも、どこよりも、正しく伝える」という理念で活動をしている。具体的にその活動の一つを言うと、羽田空港に、日本を代表するような、世界的な芸術のプラットフォームをつくろう、という計画がある。これを聞いて筆者は、確かに日本の国際空港に、そういうものがあってもいいではないか、と思い、パリの街を思い出した。